レッテル貼りなしで性を語れる世の中に

最近、それを特に実感する出来事があった。私は現在、様々な避妊法を実際に使っている人たちの経験談を紹介する『#なんでないのRadio』 というPodcastを公開している。その第1回目のゲストは、日本でIUS(子宮避妊具)を使うEmiさん(仮名)だった。

彼女が、アフターピル(緊急避妊薬)を使ったときのことを回想しながら、こんな話をしてくれたのだ。

「やっぱりアフターピルの処方を受けるってすごい勇気がいって。『そこまでのことじゃないんじゃないか』とか、『そこまでするか?私』、みたいな。『そこまで?』っていうのが今となっては意味がわからないんですけど、そのときはものすごく敷居の高いものだと勝手に思ってるんですよね」

私は、Emiさんが言う「そこまで」という言葉に、強く共感してしまった。私もそう思っていたひとりだからだ。性行為をものすごい数重ねているわけでもないし、安全かわからない相手とワンナイトを繰り返すといったリスクの高い状況にいるわけでもない。性的関係を含むパートナーがいたとしても、ピル、IUSを使った避妊やアフターピルでの緊急避妊は、どこか他人事の気がしていたのだ。正確にいえば、「他人事でなければいけない」ような気がしていた。そうしなければ、自分の意思にかかわらず様々なレッテルを勝手に貼られてしまう気がして、怖かったのだ。

しかし、Emiさんも続けるように、たった1回の性行為でも妊娠するときはするし、子どもが欲しくない限り、その1回のために確実な避妊をするのは、自分の心や体を大切に思えばなんら過剰なことではない。むしろ、なんの心理的ハードルもなく当たり前にできていいはずのことだ。

様々な場所で「自分を大切に」と声高に叫ばれる一方、実際に自分を大切にしようと動こうとしても、自分の望まないレッテルを勝手に貼られるのではという不安から、自分を守りにくくなってしまう状況。本当にこのままでいいのだろうか?

冒頭では紹介しきれなかった21歳女性の言葉を最後に紹介しよう。

「17歳で妊娠、18歳で出産しました。コンドームの破れが原因だと思いますが、それぐらいで病院に行っていいのか?高いのでは…?という心配と恥ずかしいという気持ちが勝ち、緊急避妊薬を処方してもらいませんでした。

専門学校へAO入試で入学しようとオープンキャンパスなどに通い、あとは願書を出すだけ、というところで妊娠が発覚し、そこで学歴も止まり夢や人生の方向が大きく変わりました。就職しようと思っても学歴や資格の無さから難航しています。

子供を産んだことは全く後悔していませんが、あのときもしも緊急避妊薬が手軽に手に入れられていれば、違った人生になっていただろうなと感じます。出産後は、家族計画を立て自分の意思で今はIUD(子宮内避妊用具)を装着して避妊率を高めるようにしています」(21歳女性)

性に関することを発信する人も増え、性について知ったり話したり、自分で体を守ろうとする人への偏見は、かなり減ってきているように思う。

始まったばかりの2021年だが、自分の心、体、健康、権利、ライフプランを守ろうとすることが、当たり前に、ポジティブに捉えられる社会になってほしいと心から思う。それがたとえ、性に関わることであってもー。その積み重ねの先に、ひとりひとりが望む人生の実現があれば、何よりだ。そんな願いを込めて、今年最初の記事を終わりにしたい。

性別関係なく、性や健康に関することを誰もが当たり前に発信できる社会になってほしいと願っている。photo/iStock