意外と知らない…『転生したらスライムだった件』が常識を超えて「爆発的ヒット」したワケ

ラノベ業界の地殻変動を象徴する作品
飯田 一史 プロフィール

2009年刊の川原礫『ソードアート・オンライン』、11年刊の『魔法科』以降、三秋縋などいくつかの例外を除けば、2019年に「電撃の新文芸」というレーベルを創刊するまで、電撃文庫編集部はウェブ小説の書籍化にそれほど積極的ではなかった。これはなまじ文庫ラノベで長らくシェアトップだった自負ゆえの、イノベーションのジレンマだろう。

『転スラ』の版元マイクロマガジンは、『スレイヤーズ!』のリナ・インバース的な「戦う女性」が陵辱される作品を多数刊行する二次元ドリームノベルスなどのジュブナイルポルノ――成年向けのエロライトノベル――の版元キルタイムコミュニケーションの関連会社である(両者は同じビルに入っている)。キルタイムも含めて、2000年代まではラノベ界の中では決して「主流」とは言いがたかった会社である。

そこから刊行された『転スラ』が、TVアニメ化の勢いによって「なろう」の累計ランキング1位に君臨することになり、累計2000万部を刷り、「月刊シリウス」連載のマンガ版が講談社の業績好転に寄与するほどの大ヒットになるとは、かつてのラノベ界/出版界の常識では考えられない出来事だった。

 

『転スラ』は何がそんなにおもしろいのか?

作品内容に目を向けてみよう。『転スラ』は何がおもしろいのか?

用意しているおもしろさの種類が多様なのである。

キャラのかけあいの楽しさもあるし、複雑な物語展開もあれば、主人公リムルなどの転生者たちがなぜ異世界に召喚されたのかといった「世界の謎」もある。大集団同士が戦略を練って戦いあう「戦記」要素もあるし、コミュニティをいかにして導いていくかという「内政」要素もある。

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