「37.5度」の意味するもの

実際の各校の対応はどうか。首都圏模試センターの協力を得て、2020年末時点で各校が発表している新型コロナウイルス対応について、220校以上の方針を見比べたところ、学校によってスタンスがかなり違うことがわかった。しかも説明の表現が学校によってバラバラで、どう解釈すればいいのか戸惑う保護者も多いだろう。

たとえば、入試当日の朝に自宅での検温を求める学校は多いが、「発熱・咳などの症状がある場合は受験を自粛してください」と書かれている学校もあれば、「37.5度以上の発熱がある場合は学校にご相談ください」と書かれている場合もあれば、さらっと「37.5度以上の発熱がある場合には受験できません」と書かれているケースもある。

入校時の検温でも、「37.5度以上は入校できません」と記している学校もあれば、「37.5度以上の場合でも状況を見て、別室で受験してもらえる可能性があります」とする学校もあるし、「37度から37.5度の場合は別室受験が可能です」としている学校もある。

各校の対応はここでも「令和3年度大学入学者選抜に係わる新型コロナウイルス感染症に対応した試験実施のガイドライン」を参考にしていると考えられるので、この文書を一読しておくことを強くおすすめする。各校のコロナ対応方針の趣旨をより正確に読解する助けになるはずだ。

すべての受験生がこの数字を下回ることを心から願うしかない Photo by iStock

「37.5度」という体温が一つの目安になっているケースが圧倒的に多いのも、このガイドラインに沿ったものと考えられる。ガイドラインの「受験生に対する要請事項」の例として、「試験当日における対応」という項目のなかに、「試験当日の検温で、37.5度以上の熱がある場合は受験を取り止め、追試験等の受験を検討すること。また、37.5度までの熱はないものの、発熱や咳等の症状がある受験生は、その旨を試験監督者等に申し出ること」とあるのだ。

できるだけ追試を設定するなどの配慮をして、無理して受験しなくてもいい環境を整えることで、ささいな体調不良でも正直に申告できるようにすべしというのがガイドライン全体の趣旨であることは、文書全体を読めばわかるのだが、中学入試の各校対応では、追試設定がないのに「受験を取り止め」の部分だけが流用されているように見えるケースも少なくない。それぞれの学校におけるさまざまな制約のなかでの現実的な判断と受け止めるしかなさそうだ。

各校の対応をおおまかにパターン化すると、下図のようになる。すべてのケースを網羅できているわけではないかもしれないが、頭の整理として参考にしてほしい。

「中学受験コロナ禍での学校の対応」作/おおたとしまさ

入試当日平熱だったら第一関門通過

いずれにしても状況は非常に流動的であり、いつどんな方針転換があるかもわからない。志望校のホームページは頻繁に確認してほしい。また、SNS上に広まる噂話には振り回されないように、くれぐれも気をたしかにもってほしい。

かような社会的混乱のなかにありながら、入試当日の朝に自宅で検温して平熱だったらそれだけで第一関門通過である。無事に入試会場に入ることができたら「コンディションもバッチリだ!」と思えばいい。

そしてくり返すが、もしなんらかの想定外に見舞われてしまったら、子どもの前では意地でもニコッと優しく微笑んで、「これも人生。なんとかなるさ」と言ってみせよう。そういうときこそ親の器の見せ所。最悪なのは、保護者のほうが落ち込み、子どもまでをもダークサイドに引きずり込んでしまうことだ。なんとかその最悪の状況だけでも避けられれば、子どもは親が思うより早く笑顔を見せてくれる。

全国一斉休校に始まり、塾ではオンラインでの受講を余儀なくされ、楽しみにしていたイベントはすべて中止になり、この1年ただでさえ例年以上に強いストレスに耐え続けたうえで、さらに緊急事態宣言のなかでの中学入試という前代未聞の状況に挑む<2021年の中学受験生>全員の「必笑」を願う。