教員たちが抱えるジレンマ

コロナの罹患者や濃厚接触者になることは避けられたとしても、ただでさえ体調を崩しやすい時期である。例年であれば、少々の風邪症状ならば解熱剤を飲んで試験会場に向かう受験生が圧倒的に多いだろうし、インフルエンザであっても保健室での受験を認める学校は多い。しかし今回はコロナのせいで、やっかいな状況になっている。10月の時点で取材に訪れたある学校でのこと。教員たちのこんな会話の現場に出くわした。

教員A 「当日の検温で発熱が認められたからといってその場で『お帰りください』と言うことが本当にできるかどうか……」

教員B 「別室受験の検討に際しては試験会場にカメラを設置して遠隔的に試験監督を行うという案も出たが、それも違う気がする」

教員C 「そんなことするくらいなら私が試験官をやりますよ。そのあと2週間自宅待機していいというのなら」

同時期、ほかの学校の教員たちも似たようなジレンマを口にしていた。せっかく志望校に選んでくれた受験生になんとか安心して入試を受けてもらいたいという思いは、多くの学校の教員に共通である。しかし何より受験生から受験生への感染があってはならない。施設的また人的な制約があるなかで、十分な感染拡大防止策なくして不用意に受験生を受け入れるわけにもいかない。

受験したいと思って出願してくれた受験生全員に受けてほしい。すべての教員がその思いを抱いていることだろう Photo by iStock

一方で、追試も別室受験の道も用意されていないのに検温による問答無用の門前払いを厳格化することは、結果的に通常の試験会場のなかに解熱剤を飲んだ感染者が紛れ込む可能性を増すことにもなりかねず、感染拡大防止の観点からは実効性に乏しいのではないかと私は思う。文科省のガイドラインの「試験入場前の対応」の項目のなかにも「(検温については)必ずしも全員に一律に行う必要はない」と書かれている。