「追試を行う」意味と、「追試を行えない」事情

受験生親子にとっていま最も怖いのは、受験生本人が新型コロナウイルス(以下、コロナ)に罹患してしまうことや濃厚接触者になってしまうことだろう。

開成は2020年11月14日、新型コロナウイルス罹患者または濃厚接触者になってしまったために2月1日の入試が受けられない場合の追試を、2月23日に実施することを発表した。開成は現在校舎の建替中で、施設的な制約が大きいことも勘案しての判断だとは思うが、それにしてもこの判断に私はメッセージ性を感じた。

コロナという社会的災難によって受験機会が奪われる不幸を少しでも防ぎたいそのために学校としてできることは無理を承知で最大限にやろう、それがコロナから子どもたちを守るためにいま大人がとるべきスタンスであるという意思表示である。

前代未聞の追試を行うには、実務的には多くの課題があるはずだ。まずもう1セット、入試問題を作成しなければならない。そしてその異なる問題で行われる2回の試験の合格基準に整合性をもたせなければならない。通常通りの受験者にも追試受験者にも不公平感を残さないオペレーションは至難の業になろう。

それでも、チャンスが与えられたことに対する受験生の納得感は大きいはずだ。仮に不合格になったとしても、追試の機会が与えられたこと自体が、未来を歩み出すための励ましになる。関西では、たとえば大阪星光、甲陽、四天王寺、東大寺学園、灘、西大和学園、洛星なども追試を行うと発表している。

東大に多くの合格者を出している開成がいち早く追試を決断した影響は大きいといえる。2月1日の入試に出願していた人がコロナ陽性もしくは濃厚接触者になった場合、その証明書を提出の上、追試を受けることができる仕組みだ Photo by Getty Images

一方で、神奈川県私立中学高等学校協会は11月24日に、「入試実施に向けてのガイドライン」を発し、県下の私立中学は原則的に追試を行わないことになった。一見冷たい対応ではあるが、責められない。

開成のようなトップ校であれば、「追試合格=入学」と判断できるが、似たような偏差値帯の学校が前後して多くの追試を行えば、追試のなかでの第1志望、第2志望、第3志望という選択が生じ、各中学校としては、募集定員に対して何人に合格を出せばよくて、いつまで入学手続きを待てばいいのかが判断できない事態になりかねない。そういった実務的な混乱を回避するための判断と考えられる。

東京都では追試を行う学校と行わない学校がある。もともと4回5回と多くの入試回を設定する学校では追試も行うケースが多いが、2月1日に1回しか入試を行わないような学校では追試を行わない場合が多い。

ちなみに関西では、大阪星光も甲陽も東大寺も灘もそろって1月31日に追試を行うことになっている。なんらかの調整が働いたのだろう。通常であれば東大寺は他校との併願が可能だが、追試ではどちらかを選ばなければいけなくなる。洛星は追試を2月7日に設定しており、追試では他校との併願が可能になるが、追試受験の条件に、合格したら必ず入学することを掲げている。

同様に、首都圏で2月1日に1回きりの入試を行う学校がこれから追試を行うと決めるなら、開成と同じ2月23日にそろえない限り、開成との併願が可能になる。コロナによって受験機会が減ってしまった受験生のチャンスを広げる意味では良いが、一方で各校が設定する追試日程に幅がありすぎると、神奈川県の例で説明したような混乱が生じる可能性もある。

わが子の志望校が追試を行わない学校ばかりだった場合、一度も入試を受けられない「コロナ全滅」もあり得る。ひとまず素直に志望校を選んで、そのなかに追試を設定している学校があればいいが、もし1つもなければ、追試を設定しておりかつわが子の学力で合格が見込める学校を「保険」として志望校に加えて願書だけでも出しておくという現実的な判断も、今年に限っては必要かもしれない。