今年も中学入試シーズンが始まった。新型コロナウイルス感染拡大の脅威のなかでも安心して入試を受けてもらえるように、各校もさまざまな対策を講じている。しかし一方で、「追試があるのか」「別室受験は可能なのか」といった点で各校の対応には違いも多く、戸惑っている保護者も多いだろう。

そこで、教育ジャーナリストのおおたとしまささんが、2020年末時点での約230校の学校の新型コロナ対応方針を踏まえたうえで、緊急事態宣言下の中学入試で保護者が知っておくべきことをまとめてくれた。

「状況は非常に流動的で私にもわからないことが多い。おそらく学校の先生たちだって不安だらけ。しかし、各校がどういう観点から何を判断基準にして方針を決めているのかを知っておけば、余計な不安や噂話に振り回されにくくなるはず」とおおたさんは言う。

今回の中学受験は前回とは違う

中学入試本番がいよいよ始まった。しかしコロナ禍により、いつもとは違う緊張感が、受験生側にはもちろん、学校側にもある。

入試当日、校門で受験生たちを待ち受けるのは、塾の先生たちのうるさいほどの激励ではなく、非接触型体温計の「ピッ」というかすかな音になる。張り詰めた空気のなかで掲示板に合格者の受験番号が貼り出される合格発表の場面も、今年は見られない。

ただし、受験生にとってはこれが最初で最後の中学受験であり、「そういうものだ」と認識されるだけだ。まわりの大人は騒ぎすぎないほうがいい。今回初めてわが子の中学受験を経験する保護者にとっても同じである。むしろ、上の子で中学受験をすでに経験している保護者ほど、その経験が思い込みや油断の原因になりかねないので、「今回の受験は前回とは違う」と意識して気を引き締めてほしい。

たとえば保護者控え室が用意されない場合、どこかで時間を潰さなければいけない。学校の近くに喫茶店があったとしても、同じことを考える保護者で満員かもしれない。であるならば、いっそ1〜2駅離れたところにもっと快適な場所を見つけておいたほうがいいかもしれない。

午前の入試を終えてから午後入試に向かう場合、例年であれば午後入試の学校が昼食をとる場所を提供してくれることが多かったが、今回はそれが中止されているケースもある。だとすれば、どこで昼食をとるのかを決めておかなければならない。

飲食はできるだけ避けたい状況下、昼食も考えてしまう Photo by iStock

面接中止を表明している学校も

すでに面接の中止を表明している学校も多い。受験者数と教室数の兼ね合いによっては、ソーシャルディスタンスを保つために、学校外の会場を借りて入試を行う学校も出てくるだろう。別会場での受験を割り当てられた場合にはそこへのアクセスの確認ももちろん必要になる。

一方で、いくら完璧なシナリオを用意していても想定外やミスはいつだって起こり得る。ましてや今回のコロナ禍である。完璧なシナリオを用意しておこうとすればするほどそれが少しでも狂ったときの動揺は大きくなるので、あまり神経質になりすぎないように自分に言い聞かせる冷静さも必要だ。

何があっても子どもを不安にさせないことが入試当日の保護者のいちばんの役割である。もし自分でも信じられないような想定外が発生してしまった場合には、咄嗟に「わっはっは!」と笑い出して動揺する本心を隠す練習をいまのうちに10回くらいしておいたほうがいい。そしてそっと深呼吸をして「困ったねえ。でもなんとなかるよ。これも人生」と呪文のように唱えてほしい。気持ちが落ち着くはずだ。

1992年の2月1日には記録的な大雪が降り、都心の交通網は麻痺した。さらに翌2日午前4時ごろには東京を震度5の地震が襲った。それでも各中学校は入試開始時間を繰り下げるなどして対応した。1995年には、阪神・淡路大震災の爪痕が残るなか、兵庫県の中学入試は1カ月後ろ倒しで実施された。コロナ禍だって、乗り越えられる。