「医療崩壊」を自ら招いた菅首相と厚労省、その知られざる「本当の失態」

医療現場からも不信感がつのる
財部 誠一 プロフィール

「分類変更」の兆しはあった

じつは阿保医師は2020年8月7日に開かれた「未来投資会議」に出席し、コロナの対応は民間の医療機関にも関わらせてほしいと陳述している。議長をつとめた安倍総理(当時)との間でこんなやりとりがあった。拙著『冷徹と誠実 令和の平民宰相 菅義偉論』より抜粋する。

<安倍総理>
阿保先生、指定感染症からの除外という話だが、今、指定感染症では、基本的には陽性者の方は入院の措置となる中において、保健所等が判断して、ホテルあるいは場合によっては自宅での療養を行っている。今、感染者数が増えているが、若い方たちが中心であることから、ホテル数をしっかりと確保しながら、無症状者や軽症者はなるべくホテルでという考え方の下に運用している。ただ、国にルールを決めてもらいたいという声も強くあるわけであるが、その点は、先生はどのように考えておられるか。

<阿保氏>
首都部以外の近郊都市圏に関しては、恐らく東京都のようなホテルの準備や、実際に自宅待機を強く要請するという空気感は全くできていない印象がある。実際には、軽症患者、いわゆる無症状の方々が病室を占拠してしまって、それに医療インフラがかなり奪われてしまっているという現状がある。かなり強いメッセージが届かない限りは、このまま病院の施設、ソフト、ハードの両方の医療ソースが奪われたままで、インフルエンザ感染症の流行期を迎えるというのは非常に不安である。

 

それから3週間後の8月28日、安倍は記者会見を開いて辞意を表明。そのニュースがあまりに大きすぎたために影が薄くなってしまったが、同会見の前段では以下のようにも述べていた。

「新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARS(重症急性呼 吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)といった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します」

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舞台裏を明かせば、阿保医師を未来投資会議に出席させたのは当時の菅官房長官であった。「医療崩壊を起こさせぬためには現場の医師に裁量権を与えるために指定感染症になっているコロナをインフルエンザなみの5類相当に分類変更はできないか」という診療医たちの声をうけて実現したのだ。菅が仕込み、安倍が記者会見で分類変更に言及したのに、それが実現しないどころか、菅政権下で厚労省の医系技官たちは「1年間は2類維持」を決めてしまった。

つまり医療崩壊危機を招いたのは厚労省自身なのだ。田村憲厚労大臣は自民党きっての厚労族議員である。仕事もできるがしょせん厚労省の都合よく動くだけなのだろう。菅総理の失態はGoToに執着したことでも、緊急事態宣言発出に消極的だったからでもなく、バリバリの族議員を厚労大臣に任命してしまったことだ。

財部氏の新著『冷徹と誠実 令和の平民宰相 菅義偉論』がKADOKAWAより刊行。めざす理念は「自助・共助・公助」―。三十年ぶりに誕生した「平民宰相」は、頭のなかでいま何を考えているのか? 生い立ちから政治思想、初公開の秘話まで、人間・菅の本質にブレーンが迫る。

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