H: 本では具体的に、中国でやったことが分析されています。私の理解では、要は一時期、徹底して我慢すれば、後はよくなる。そういうことですよね。
近藤: はい。東京ドームがある後楽園の語源となった「先憂後楽」の精神です。古今東西、感染症対策は、「検査と隔離」と相場が決まっています。まず検査について、中国は徹底したPCR検査を行いました。発生源となった武漢では、約20日間かけて、990万市民全員に、PCR検査を実施したのです。
H: 990人ではなくて、990万人ですよね。桁が違いすぎて検査する光景が、目に浮かびません。
近藤: そこは中国らしいのですが、近所の20人ずつをまとめて検査していったのです。20人分の検体を入れたものが陰性なら、その20人は全員、陰性ということになります。もしも陽性だったら、そこで初めて20人を個別に再検査していくわけです。
H: 990万人のPCR検査が可能だったら、人口1400万人の東京都民全員のPCR検査というのも、あながち不可能ではないかもしれませんね。
近藤: そうですよ。2020年度に通した一般会計総額は175兆6878億円と史上最高額です。日本政府は十分な「コロナ予算」を組んでいるのだから、民間も巻き込んで、徹底した検査をやればよいのです。
ちなみに中国で、「市民全員のPCR検査」を行ったのは、武漢だけではありません。青島、カシュガルなど、クラスターが起こったところでは必ず行い、その後、抑え込みに成功しています。
最近では、正月明けの2日に、首都・北京に近い石家荘市で感染者が1人出て、その後も増えたため、1月6日から3日以内に全市民がPCR検査を行うよう義務づけました。検査は1月9日12時に完了し、1025万1875人の市民が受けました。そこで354人の陽性者を割り出したのです。
H: それはすごい!これまでは、「中国はコロナを隠蔽している」というイメージを抱いていましたが……。
近藤: 中国では、前日に感染者と確定した人の状況を、一人ひとり具体的に公表しています。例えば、石家荘市は1月10日、前日に感染者と確定した44人の状況を公表しています。最初の一人目だけ訳すと、こんな感じです。
この日だけで、こうした感染者情報を、44人分も公表しているのです。市民はこうした情報を見れば、自分が濃厚接触者であるかないかが、おおよそ分かります。
H: なるほど、たしかにそうですね。もう一つの「隔離」の方も、新著で具体的に書かれていますね。