1月6日(アメリカ時間)に起きた、トランプ支持者たちによる連邦議会議事堂乱入事件。アメリカで2019年にベストセラーとなったディストピア小説『フライデー・ブラック』(駒草出版)などの翻訳で知られる翻訳家の押野素子さんは、現地ワシントンD.C.在住で、この衝撃の事件を目の当たりにしていた。現地住民は事件が起こる数日前から緊張と恐怖に包まれていたという。その様子を写真と共にレポートしてもらった。

反マスクの連中が大挙して押しかけてくる…

「今回は、荒れるだろうな」と思っていた。1カ月近く前から、トランプ大統領は2021年1月6日の首都集結を支持者に呼びかけ、「ワイルドになるぞ!」と豪語していたからだ。白人至上主義者の極右集団で知られるプラウド・ボーイズも、武装して乗り込むと宣言していた。波乱は予想されていた。

ワシントンD.C.の住民からしてみれば、たまったもんじゃない。もちろん、「平和的に集会する権利」は、アメリカ合衆国憲法で認められている。とはいえ、2020年11月14日と12月12日の2回にわたって行われたトランプ支持者の集会の際に、数々の住民の被害が報告されていたのだ。ジョギングや犬の散歩の最中に暴言を浴びせられ、唾を吐きかけられた。マスクをして運転していたら、車を取り囲まれた。カップルで歩いていたら、いきなり殴りかかられた――これらは被害のほんの一部だ。

プラウド・ボーイズに対するカウター・プロテストを呼びかけるポスター〔PHOTO〕筆者提供

なお、ワシントンD.C.におけるトランプの支持率は5%ほどである。そのため、トランプ支持者から同市は目の敵にされており、今回は「街を燃やしてやる!」と息巻いている者たちもいた。そう、トランプの熱狂的な支持者は、鼻息の荒い人が多い。鼻息が荒い上に、マスクをしないときている。新型コロナウイルスが猛威を振る中、マスク率ほぼ100%の我が街に、反マスク派の連中が大挙して押しかけてくる。それだけでも、住民は戦々恐々だった。

市長から2日間の在宅勤務の要請

1月4日。朝、会社からメールが届いた。「大規模な抗議運動が予定されているため、1月5日、6日の2日間は在宅勤務を採用するよう、市長から要請が出ました」。明日は外に出ない方がいいな……そう思った私は、昼休みの時間に偵察がてら散歩に出た。向かったのはフリーダム・プラザ。ダウンタウンの広場だ。翌1月5日には、ここで前乗り組による集会が行われる予定だった。

目的地付近で、ある張り紙に気づいた。「ここから1,000フィート(約300メートル)以内で、あらゆる銃器を禁じる」。ニュースで見た張り紙だ。ワシントンD.C.の銃規制は厳しいが、それでも州外から銃器を持ち込もうとしている参加者が多いために、警察がこの紙を貼って警告している、という話だった。

こちらはまた違う張り紙。「危険、武装したファシストがDCにいる」というメッセージと共に、危険な場所が記されている〔PHOTO〕筆者提供