差別撤廃に向けた世界の取り組み

このように、女性研究者が少ない原因としてジェンダー・バイアス等の女性差別があることは、日本を含む世界中で問題となっている。この明確に存在する差別を撤廃すべく現在、世界中で様々な取り組みが行われている。

例えば、私の研究分野では、国際学会においてダイバーシティ(多様性)に関するセッションが開かれることがここ数年通例となっており、男性を含め多くの研究者が、いかに差別や偏見を業界からなくしていくかを真剣に議論している。コロナ以前に最後に参加した学会では、ハラスメントの現状とそれを無くすために実際に行われている具体的な対策例が紹介され、その修正点を細かく議論していた。

また、研究業界では女性が職だけでなくプロジェクトが採択される割合も不当に低いという点も問題となっているが、例えば私の働くオーストリアの科学研究費団体「オーストリア科学財団(FWF)」では、ホームページに公表するかたちで透明性のある様々な取り組みを行い、ここ数年は、プロジェクトが採択される女性の割合が3割を大きく超えている。

男女のプロジェクト採択率。青のグラフが女性で緑が男性/FWFのホームページより

残念ながら、このような差別の撤廃に向けた動きは日本ではまだ弱く、上述したように、日本における女性研究者の割合は欧米諸国の半分程度であり、女性研究者のプロジェクト採択率も先進国の平均を大きく下回るなど、世界に比べて遅れをとっている。

日本のこの遅れの決定的な原因の1つは、冒頭で紹介した吉村知事の差別への訴えを軽視した言葉に代表されるように、私たち男性が差別の撤廃に向けて「本気」で動けていない点にあると私は考えている。そしてその背景には、実感が持てないから、という甘えが隠れている。

私はそのことを一昨年、ある講演に出席したときに痛感した。このとき目の当たりにしたことは、生涯忘れることはないだろう。