女性研究者が少ない3大理由

女性を研究職から遠ざける要因は数多くあり、それらが複雑に絡み合っていると考えられるが、上記の論文や昨年出版された論文(「女性研究者のキャリア形成とワーク・ライフ・バランス:専門・管理職の女性労働」(篠原さやか著、日本労働研究雑誌 62(9), 4-17, 2020-09)でも議論されている以下の3点が多くの要因の根本にあると考えられている。

・ジェンダー・バイアス
・ロールモデルの欠如
・理工系科目への興味の性差

まず「ジェンダー・バイアス」についてであるが、研究業界における代表的なバイアスとして、「女性は生物学的に研究者に向かない」という科学的根拠に欠いたものがある。私の実感としても、例えば発表の場で女性の研究者や学生に対してマウントを取るような必要以上に厳しい質問が男性からなされるなど、この種のバイアスを感じる場面に遭遇する機会は少なくない。

次に「ロールモデルの欠如」についてであるが、上述したように女性研究者の数は実際に少なく、女性は男性に比べ研究者になるイメージを持ちづらい。特に、教授等の高い役職の研究者に女性が少ないという現状は、女性から研究者として成功できるという希望を奪ってしまっている。

また研究業界に限った話ではないが、「女性=家事育児」という古い価値観が蔓延する社会においては、女性が研究者として成功するには、男性と違い、研究活動とケア労働の両方を高いレベルでこなさなければならないという意識が社会レベルで植え付けられ、このことが研究者として成功するイメージを女性が持つことをさらに難しくしている。

写真はイメージです〔PHOTO〕iStock

そして「理工系科目への興味の性差」についてであるが、日本を含む様々な地域の調査で、高等教育前の時点で既に女子学生は男子学生より理工系科目へ興味が薄いと報告されている。この原因を生物学的な問題に押し込める論説もあるが、科学的根拠は薄い。一方で、上記2つの要因が子供が理工系科目を学ぶ意欲をも奪っているとの考察は頻繁になされ、実際に私も、上の子(10代前半)の学校の物理の先生から、女子学生が自分の授業に興味を持ってくれない傾向があるが、それは上記2つの要因が原因ではないかと相談を受けたことがある。