文/FRaU編集部

「禁断の愛」とはなにか

「禁断の愛」は小説・ドラマ・映画・漫画と多くの作品で描き続けられてきた。

敵対している家や国の相手と恋に落ちてしまった『ロミオとジュリエット』型。
不倫の代名詞となった『恋に落ちて』型。
教師と生徒の『ツ・イ・ラ・ク』型、パートナーの両親やきょうだいと恋に落ちてしまう『ダメージ』型……。
これらは、本当の意味でその関係性が変わらない限り「許されない」「報われない」恋だ。

小説が世界中で大ベストセラーとなり、映画化された『マディソン郡の橋』も不倫という「禁断の愛」が描かれている Photo by Ken Regan/WARNERGetty ImagesBROS/SUPPLIED BY ONLINE USA.INC/Getty Images

これらと同様に、かつては同性同士の恋も映画『モーリス』のように「禁断の恋」とされていた。

しかし、今ではLGBTへの理解は大きく進歩している。田中圭さん主演の『おっさんずラブ』も2016年の単発ドラマに続いて2018年には夜11時15分からの深夜ドラマで連続ドラマになって社会現象になり、2020年には映画が地上波で夜9時から放送された。弁護士と美容師の男性カップルの姿を描いたよしながふみさんの『きのう何食べた?』は西島秀俊さんと内野聖陽さんのW主演で2019年に深夜帯の連続ドラマとして放送されて大ヒット、お正月のスペシャルドラマで夜10時から放送された。

『逃げるは恥だが役に立つ』スペシャルドラマでの沼田さんと梅原君の恋も含め、これらのドラマの恋愛はすべて「純愛」として受け止められることはあっても「禁断の恋」「許されない恋」とは描かれていない。人を好きになることに、性別で「許されない」ということはないのだ。

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「人を好きになる」ということとは

「人を好きになること」とはどういうことなのかを、性別を超えて考えさせてくれる物語が、「究極の恋愛」と帯にも書かれていた木原音瀬さんの『美しいこと』(講談社文庫)だ。2009年に蒼竜社で上下巻のノベルスが刊行されたときには、「このBLがすごい!」の1位にもなったベストセラーである。

主人公の松岡は営業職のエース。実際は足でコツコツ稼いでいるのだが、綺麗な顔立ちをしているがために、「顔で契約が取れていいな」と揶揄されて苦笑いをしている。そんな彼のストレス解消法が週に一度昔の彼女の服を使い、女装して街に出ることだった。ウィッグをつけ、メイクを施し、スカートをはいて街に繰り出す松岡。そこで男たちから声をかけられては断って楽しんでいたのだ。

(c)犬井ナオ/木原音瀬/講談社『美しいこと』

しかしある日、ナンパされた相手が営業相手の部長だったために情報収集と思って飲みに行ったところ、男だとわかって暴力を振るわれる。ボロボロになって雨の中靴も履かずに呆然としている松岡に手をさしのべたのは、同じ会社で「使えない人」として有名な寛末だった。松岡は思わず伝えた「江藤葉子」という名前で寛末と時折会うようになる。そして――。

(c)犬井ナオ/木原音瀬/講談社『美しいこと』

性別を超えた「人間同士の恋愛」の物語はとても繊細で、愛する思いの強さをこれでもかと見せつける。犬井ナオさんによって漫画化された『美しいこと』もまた、その繊細さが見事に絵と物語で浮かび上がり、思わず身もだえてしまうのだ。