山中先生に新型コロナウイルスとどう戦えばよいか聞いてみた

免疫ネットワークの力を治療に生かす
山中 伸弥, 浅井 健博 プロフィール

感染で何が起きるか調べる上でiPS細胞は有用

iPS細胞から、がんを攻撃する特別なキラーT細胞を作り、がん患者さんに移植することを目指した研究が進められています。同様の手法で、新型コロナに感染した細胞を攻撃するキラーT細胞を作り、移植しようという試みが始まっています。すぐに治療に応用できるわけではありませんが、数年にわたってこのウイルスとつきあうことを考えると、将来的な治療のオプションとして有効ではないかと考えています。

 

――免疫学分野で世界的に著名なイエール大学教授の岩崎明子さんを取材したところ、iPS細胞から脳の組織を作り、新型コロナが神経細胞に感染するのかどうかを調べていると聞きました。新型コロナに感染すると、脳と体の物質のやりとりをコントロールしている部分の神経細胞が、ダメージを受けているケースがあると報告されています。

iPS細胞を使えば、脳や肺、あるいは心筋細胞など、新型コロナが直接的に、もしくは間接的に影響を及ぼすと考えられる組織を作り出せます。また、すでに感染して、いろんな症状を示した人たちからiPS細胞を作って、実際に起こった症状に近い状態を再現するような実験材料も提供することができる。その点で、新型コロナに感染すると細胞レベル、組織レベルで何が起こるのかを調べる上で、iPS細胞は有用なツールになると考えています。私たちの研究所でも研究をすでに進めているところです。

――私たちは番組制作を通じて、たくさんの研究者たちを取材してきましたが、彼らの熱意には凄まじいものがあります。その熱意は、なんとかこの危機を乗り越えようとする使命感から生まれているのだと思いますが、未知の研究対象に対する知的好奇心も彼らを突き動かす原動力になっているようです。新型コロナとの戦いがこれからも長く続くとすれば、研究者のみなさんの前向きな気持ち、熱意がますます重要になってくると思います。

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