山中先生に新型コロナウイルスとどう戦えばよいか聞いてみた

免疫ネットワークの力を治療に生かす
山中 伸弥, 浅井 健博 プロフィール

私たちはまだこのウイルスの一部しか理解していない

全身さまざまな臓器に後遺症が残ることがわかってきていますが、よく見られる後遺症のひとつは、脱毛です。しかし、なぜ脱毛が起こるのかはまだはっきりしていません。これまで新型コロナとはあまり関係がないと思われていた分野、脱毛であれば皮膚科のような分野でも、新型コロナの研究は進んでいくでしょう。私たちはまだこのウイルスのごく一部しか理解していないのです。半年前よりは今は理解が進んでいますが、決して全貌を理解したわけではない。動物実験ではわからないこともあるので、すでに感染して治った方々、後遺症で苦しんでおられる方々にご協力いただいて、多角的な研究を進めていく必要があります。

 

――本書のベースになっているNHKスペシャル「人体VSウイルス~驚異の免疫ネットワーク~」は、令和2年度文化庁芸術祭参加作品となりました。ウイルスと生命の攻防の歴史をたどりながら、免疫の精妙な仕組みに焦点を当てたのも評価されたポイントのひとつです。番組では、最新の知見を踏まえて、免疫がウイルスにどう対抗するのか詳しく解説しました。ただ、免疫はウイルスだけでなく、さまざまな病気にかかわりを持っていて、実に奥深いですね。

近年注目されているのは、がんに対する免疫です。2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑(ほんじょ・たすく)先生らが発見された免疫チェックポイント阻害因子は、免疫のブレーキを踏んで攻撃を回避するがんに対して、あらかじめブレーキを踏めないようにして、免疫にがんを攻撃させるような働きを持っています。この発見をきっかけに、免疫療法は大きな脚光を浴びました。

――免疫の仕組みを利用して治療に生かそうという研究で、山中さんが世界で初めて開発に成功した、体のさまざまな種類の細胞に変化する万能細胞であるiPS細胞が役立っているそうですね。

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