山中先生に新型コロナウイルスとどう戦えばよいか聞いてみた

免疫ネットワークの力を治療に生かす
山中 伸弥, 浅井 健博 プロフィール

ファクターXはひとつではなく、複数であるのは間違いないでしょう。そのひとつは、マスクの習慣だと思います。また挨拶ひとつとっても、人と人との密着の度合いは地域によってかなり違います。ほかにも、人種間の遺伝的背景の違いや、本書で詳しく触れられていますが、普通の風邪のコロナウイルスが何度か流行している地域とそうでない地域など、新型コロナ流行以前の別の感染症流行の地域差がかかわっている可能性もあります。今、精力的に研究されているところですが、十分に解明できたとはまだ言えません。ファクターXがあるから安心できるという状況ではないのです。

 

免疫が治療薬やワクチンの要

――一方で、治療法についてはかなり進展しましたね。

臨床の先生方が、医療現場の最前線で経験を積まれて、どんな薬をいつ使えばいいか、かなりわかってきました。レムデシビル、デキサメタゾン、あるいはヘパリンなどを必要に応じて用いることで、重症化したり、亡くなられたりする例は、以前に比べれば減ってきたと思います。

――ワクチンについても、米ファイザーや米モデルナによる新しいタイプのものが、数万人規模の臨床試験で90%以上もの有効性を示したと報告されました。いよいよ接種ということになりますが、一方で、これまでのワクチンは、数年から十年にわたる長い年月をかけて開発し臨床試験を行ってきたのに比べ、安全性の面で懸念があります。

今回のワクチン開発のスピードは、人類史上最速です。これほどの速さで開発できたのは、従来のワクチンの作製法とはまったく異なる遺伝子組み換え技術を使ったからだと考えられます。しかし、この種のワクチンは人間に用いられたことがほとんどありません。今回は億単位での接種が想定されますが、仮に10万人に1人の割合で重い副反応が出るとすると、その絶対数はかなり大きくなる。ワクチンが使用できるようになったとしても、副反応にどう対処していくか、いつ誰が接種するのかに関する議論が重要になるでしょう。

――新型コロナの症状は実に複雑です。初期のころから味覚障害や嗅覚障害が回復後も続くと言われていました。それだけでなく、倦怠感や、脳卒中、目の充血など、今では100以上の奇妙な症状が報告されています。

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