日本人と肉ブーム

赤身肉、熟成肉、ジビエ、羊肉と、肉のブームが近年次々と起こっている。数々の肉ブームは、人々の味覚が変わったことを告げているのではないだろうか?

始まりは、リーマンショックがきっかけと思われる、ホルモンブームだった。ホルモンことモツを食べ歩いたルポ『悶々ホルモン』(佐藤和歌子、新潮社)が発売されたのは、2008年。

この頃、モツ好きの女性たちを「ホルモンヌ」と呼んだことから分かるように、ブームになったのは、それまでモツをあまり食べなかった女性たちがハマったからである。

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続いて赤身肉が人気になり、熟成肉がブームになる。生の肉を熟成させ、うま味を引き出すには技術が必要である。その技術を開発した代表が、滋賀県草津市の精肉店「サカエヤ」社長の新保吉伸さん。2009年から、東京でもコツコツと販売先を開拓した成果が実り、2013年頃に熟成肉ブームが到来した。

同じ頃、ジビエブームもあった。2018年12月に「日本人にとって『ジビエ文化』とは何か?」という記事を書いたが、ぐるなび総研による「今年の一皿」に選ばれたのは、2014年。

羊肉は、2010年代に輸入額が増加。ブームを反映して、『dancyu』が羊肉特集を組んだのが、2018年6月号。柴田書店の『羊料理』など、羊肉レシピ本が次々と出るようになったのが、2019年以降――。

羊肉の人気の一因は、中国料理の流行だ。中国東北地方のチチハルから日本へ来た梁宝璋さんによる「味坊」などの店が人気になったことや、この時期注目された池袋北口、西川口などの新チャイナタウンの中国人経営の飲食店で、羊肉料理が出されている。また、一部で流行る中東料理でも定番の食材である。2016年にピークを迎えたパクチーブームの折も、トッピングとして合う羊肉料理は人気だった。