東京・桜新町で43年続く〈きさらぎ亭〉。しかし3年前に、建物の老朽化で、突然の移転を迫られることに……。街の定食屋さんが選んだ選択とは?

不安を抱えつつクラファン開始
すると思わぬ反応が……

エビクリームフライ定食。このボリュームで950円。近くの大学の学生にもファンが多い。

「できるはずがない。家族みんな最初はそう思っていました」と3年前を振り返る、店主の横山茜さん。東京・桜新町の定食屋〈きさらぎ亭〉がクラウドファンディングへの挑戦を決意したのは2017年9月末。老朽化による立ち退きが決まったその日だった。

「私の主人がやってみよう!と言い出したんです。でも両親は反対。私も資金が集まるとは到底思えず、不安しかありませんでした。それでも他に方法はないし、一か八かプロジェクトを立ち上げてみることにしたんです」

移転前!以前の〈きさらぎ亭〉。
開店当初の写真には、横山さんのご両親の若き日の姿が。

〈きさらぎ亭〉の創業は1977年。横山さんの両親が二人三脚で営んできた店だ。長いカウンターとお座敷。壁には手書きのメニューが貼られ、厨房からは揚げ物の音やキャベツを刻む音。美味しそうなデミグラスソースの香りも漂ってくる。誰もが気軽に立ち寄れる街の定食屋。昼食を食べに来るサラリーマンや近くの大学に通う学生さん。みんな、お気に入りの定食を注文しては、美味しそうに食べて、ごちそうさま!と帰っていく。

「お顔を見ればよく来てくださる方だと分かるけれど、名前は知らないし、話したこともない。クラウドファンディングを始めても誰にどう伝えたらいいのか……という感じでした」

フライから刺身まで種類豊富。

クラウドファンディングのプラットフォーム〈READYFOR〉の担当者と考えたのは、今の場所を立ち退くまでの期間を最大限に活用すること。通常1ヵ月近くかける事前準備を2週間で終わらせ、資金集めをスタート。その時点で営業日はあと1週間。突然の閉店が決まったこと、そして移転資金を集めるためにクラウドファンディングを始めたことを、店頭に貼り紙をして常連さんにお知らせすることにした。