「英語はどこで覚えたん?その自然なしゃべり方はなに?なんでできるん!?」
六本木ヒルズにある「YouTube Space Tokyo」で、男性がおもわず関西弁で驚きの声を上げた。声の主は、英語と日本語を流暢に使いこなすジャマイカ出身の運営スタッフだ。同僚の日本人女性が、まるでネイティブのように英語のニュアンスやイメージを絶妙に掴みながら、いたって自然に話している様子に驚嘆したのだった。
当の日本人女性とは、外資系企業を渡り歩いている中本彩佳さんだ。YouTube Space Tokyoは、ユーチューバーらの動画制作から配信までを一貫してサポートする場や機会を提供するため、2013年2月に日本にローンチした。中本さんはその立ち上げメンバーとして、4年半にわたり受付エリアを担当してきた。
「英語と日本語の使う割合は、半々くらいでした。お客様であるクリエイターのみなさんは日本人が多いので、日本語を使います。一方で、上司はカナダ人とアメリカ人。日々の業務で使うメールは基本的に英語でした。
実施されるイベントやYouTube Space Tokyoを見学するツアーには、親会社であるグーグルや政府機関のVIPなど海外からいらっしゃる方が多かったので、英語を使う機会は多かったです」
YouTube Space Tokyoでの仕事がひと段落すると、中本さんはKEFというイギリスの老舗スピーカーメーカーに活躍の場を移すことになる。
「KEFが持つオフィシャルショールームがあり、そこの公式アンバサダーに就任しました。上司は香港人で、業務は基本的にすべて英語です。デジタルマーケティングのチームで、さまざまな分野で活躍するアーティストを迎えたイベントを企画するなど、日本ではまだあまり知られていないスピーカーをPRするのがミッションでした」
そして中本さんの英語力は、またしても高く評価されることになる。社内のみならず、社外からもだ。
「英語圏のアーティストさんや外部の PR チームの方々、最終的にはイギリス大使の奥様にもお会いする機会がありましたが、みなさんに英語を褒めていただくという驚きの経験をしました。
もちろん、完璧ではない私の英語を受け入れてくださる寛容な方々ばかりでした。けれどもそうした経験の積み重ねで、これからも英語を仕事で使っていきたいとポジティブに思えるようになりました」
謙虚な中本さんだが、ネイティブからも称賛される英語力は、これまでどうやって培ってきたのだろう。
中本さんは帰国子女ではない。これまでに留学経験もない。新卒で入社したドメスティックな電子機器メーカーでは営業事務で、業務で英語を使うことは一度もなかった。それにもかかわらず、卓越した英語力は、完全に独学で身につけたという。筆者が驚愕していると、中本さんは微笑みながらこう言い切った。
「べつにNHKから雇われているわけではないですけれど、私の英語力はNHKの語学番組でできています」