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多くの人がまだまだ知らない「小池百合子の正体」

『女帝 小池百合子』を読む(1)
「その人はひどくおびえ、絶対に自分の名が特定されないようにしてくれと、何度も私に訴えた」――。

被取材者からの「命乞い」とさえ思えるこの一節で始まる『女帝 小池百合子』は、2020年、最も売れた本のひとつだった。

都知事選挙の直前に出版され、コロナ禍で都知事としての露出も増えていたこともあってか、ノンフィクション作品としては異例の20万部を超えるヒットとなっている。

小池氏の政治手法に疑問を持ったり、学歴問題について納得がいかない人々にとってはまさに「我が意を得たり」の内容だったのだろう。

一方で、文芸評論家の斎藤美奈子氏は「Webちくま」ほかでこの本について書評をし、多くの「左派リベラル系男性論客」がこぞって激賞している事実に「絶望的な気持ち」になったとし、「この本を褒めた人は、(1)じつはきちんと読んでいない、(2)都知事選前の時流に流された(リベラル陣営に忖度した・選挙で彼女を落選させたかった)、(3)そもそも本を読む力がない、(4)そもそも性差別主義者である、のどれかではないかと思います」と指摘している。『女帝』に著書が引用されている筆者も同様の感想を持った。

 

大下英治氏の『挑戦 小池百合子伝』(河出書房新社)と読み比べると、大下氏お得意の「提灯持ち」部分を削っても内容の厚みの差は歴然としている。

しかし『挑戦』はさして話題にもならず、『女帝』は人々を興奮させた。「小池百合子」という同じ人物の評伝にもかかわらず、この差はなぜか。

『女帝』とは何だったのか。「ポスト菅義偉」として、2021年の総選挙で国政へと戻るのではないかとの噂が絶えない「小池百合子」とは何者なのか。新年に当たり、もう一度読み直してみよう。