独特の経営で劇的に業績を伸ばしているワークマン。その最大の理由は、“すること”ではなく“しないこと”を重視したところにある。たとえば仕事の期限を決めない、ノルマをもうけない、会議は極力しない、社内行事はしないなど、あらゆる“しない”を実行した結果、昨年10月にオープンしたアウトドアウェア店『#ワークマン女子』は、連日行列ができるほどの人気と化している。

日常においても、ついついノルマを課して頑張りすぎてしまう私たち。でも、新型コロナウィルスが猛威を振るい、これから先どうなるか誰もわからない今、大事なのは、何をするかではなく何をしないかを、決断する勇気なのかもしれない。昨年10月、まさにその秘密を1冊にまとめた書籍『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』を上梓した、土屋専務に“しない選択”のコツを伺ってみた。

ストレスは、やる気を削ぐ

――ワークマンは様々な“しない”を重視するようにしてから、業績が伸びていったそうですね。

ワークマンの“しない”には2種類ありまして。1つは作業着とアウトドアウェアに集中して、余計なことをしない。そういった業態のポジショニングにおける“しない”ですね。

もう1つは社員にストレスをかけることを“しない”。期限やノルマをもうける、といったことですね。実生活でもそうですけど、頑張って何かをしよう、というのが実は良くない。それでプレッシャーがかかってイライラしたり、人に八つ当たりしたりするようになりますから。だからそういうものを一切やめて、できるときにやればいい、という方針に変えたんです。

たとえば私が現場(店舗)にお願いしたいことがあったとすると、『急がなくていい。時間があるときにやって』と言うんです。彼らには目の前のレジの仕事がありますから、そっちを優先するように、と。そうしたところ、どのくらい遅くなったかというと、そんなに変わりませんでした。

『暇なときにやったのでいい。2,3か月かかってもいい』と言っておくのですが、大抵は1週間ぐらいでできる。それ以上遅くなったことは1回もありません。これが『すぐにやってくれ』と言うと、他の仕事を止めてやりますから残業が増えてしまうんです」

――急かさなくてもスピードがそんなに変わらなかった、というのは興味深い結果ですね。でも期限をもうけないってなかなか勇気がいることだと思います。決断できた理由は何だったのでしょう?

やはりストレスというのは“やる気”を削ぐんじゃないか、と思ったからです。日本の経営者はマジメですから、みんなに発破をかけますよね。本人ですらできないんじゃないだろうかということを、きっちりタイムスケジュールを組んで、プレッシャーをかけて、会社ぐるみでやろうとする。でもみんな、やることが多いから集中できないし、自分がやりたいことでもないからやる気も出ない。これは無駄なのではないかと思ったのが一つです。

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もう一つは、仮にそれで目標達成しても、次々に目標を設けるから一つ一つはたいした成果を生まない。だったら一つだけを、数年かけてもしっかり取り組んだほうが、確実にできるし成果も大きい。そういうわけで我々は“周回遅れの経営”をおこなっているのですが、一時は遅れているように見えても、時間が経てば大抵追いつきます。他の企業はいろんなことに手を出して、ほとんどは中途半端に終わりますから」