豊田章男社長の「警鐘」…カーボンニュートラルで日本経済は沈没する

誤った政策と穿った報道が招く未来とは
川口 マーン 惠美 プロフィール

ガソリン車を廃止したらどうなるか

ドイツのメーカーが日本車をどれだけライバル視しているかということについては拙著でも触れたが、特にフォルクスワーゲンのトヨタ敵視が激しい。フォルクスワーゲンが米国でディーゼルを売ろうとして不正ソフトを埋め込んだのも、その背景には、どうにかして米国市場からトヨタを追い出したいという焦りがあったと思われる。

しかし、フォルクスワーゲンの「クリーン・ディーゼル」はクリーンではなかった。かなりクリーンで、しかも、安心して走行できるのは、今のところハイブリッドで、その技術は日本の宝だ。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

トヨタは日本が世界に誇る大企業だ。ここ半世紀の日本経済への貢献も計り知れない。日本経済を支えているのは、昔も、そして今も自動車産業であることは間違いない。経産省はそれを「自動車の一本足打法」というが、その一本足がトランプ大統領の関税攻撃で追い詰められても、助けようとしなかった。さらにその上、2030年代にガソリン車の新車販売を無くせば、日本はいったいどうなるのか。

豊田氏は言う。乗用車400万台をEVにすれば、特に冬場は電気が10〜15%も足りなくなる。その量は原発なら10基、火力なら20基分。また、充電ステーション整備の投資コストが約14〜37兆円。だからこそ、「理解の少ない方々」が、ガソリンはやめろと無闇に主張している現状に、氏は強く警鐘を鳴らしている。

さらに氏が力説していたのは、地方の人々のライフラインである軽自動車を守ること。軽は日本の国民車で、地方のモビリテイの8割を担っている。しかも、日本の道路は軽自動車しかすれ違えないような細い道が全体の85%を占めているという。

もし、カーボン・ニュートラルの美名のもとに軽自動車が庶民の手に届かなくなれば、地方は崩壊するだろう。「一般国民の手に届かない車を作るのは、自動車メーカーがやってはいけないこと」という氏の言葉は、まさにその通りだと思う。

なお、日本の発電は現在8割近くが火力だから、同じ車種を作る場合でも、たとえば8割近くを原発で賄っているフランスより、生産工程でのCO2の排出量が多くなる。つまり、このままでは、日本車はいずれEU市場から締め出される運命だ。

氏はかなり周到に資料を用意しており、たとえば、ガソリン車のCO2排出量が01年度の2.3億トンから18年度の1.8億トンと22%も削減していること、また、同じ期間のJC08モード燃費測定では、1リットル当たり13.2kmから22.6kmと、71%も燃費が向上していることなども挙げていた。

なお、あまり知られていないが、EVの完成時に行われる充放電の検査では、一台につき平均家庭の1週間分の消費電気がただ無駄になるそうだ。これを毎日、何千台分も行わなければならないということを、政治家はわかっているのかというのも、氏の訴えの一つだった。

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