上阪:そのためにヒントにされていることはありますか?

柿内:映画ですかね。僕は5歳の時から映画館に通っていて、本よりも映画ばかり見て育ってきたんですよ。映画って、最初はストーリーで始まるんですが、だんだん登場人物に気持ちが入っていって最後は感情で終わるように作られていると感じています。だから、細部までストーリーは覚えていなくても、「あれはいい映画だった」っていう感動だけは残るんですよね。あとは、旅先で美しい景色をようやく見ることができた時や、ゲームで勝利を重ねてクリアできた時の感動なんかもヒントにしています。僕は本を作る時、ノーラン映画やグランドキャニオンを見た時の感動を超えるにはどうしたらいいかって、頭の中でそんなことばかり考えています。

 

著者の「その人ならではのコア」を感じ取る

上阪:企画はどうやって作っていくのですか?

柿内:実は、企画を作ることにはあまり興味がなくて。僕はクリエイターではありませんからね。編集者として、著者の一番伝えたいものを「体験価値」のある形にして、読者に提供することだけを考えています。だから、目の前に著者がいたら、まずはその人の一番いいところ、その人ならではのコアを感じ取ることに徹するんですよ。その次に、それを読者が理解できる文脈に乗せることを考えます。

上阪:企画より、その著者らしさが何より大切というわけですね。

柿内:そうですね。『嫌われる勇気』も著書の古賀史健さんが、アドラー心理学の専門家、岸見一郎さんの本が作りたいと企画を持ってこられたのが始まりです。古賀さんは、10年以上前からいろいろな編集者にこの企画を持ちこんでは、「売れないだろう」って返されていたそうです。それまでのアドラー心理学の関連本の売れ行きを見ればそうなってしまうんですよね。でも、僕の関心は「古賀さんがそこまでやりたいもの」という点にだけありました。

上阪:売れるかどうかは気にされないと。

柿内:僕は考えませんね。それを気にしだすと、その枠内でしか考えられなくなってしまいます。著者の核心部分をちゃんとキャッチして読者に伝わる形にさえできたら、いい本はできると思っています。売れるか売れないかは、その結果にすぎないわけですよね。

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