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「習近平国防法」の成立…強国・強軍を目指す法改正が意味するもの

日本がいまだ憲法9条に縛られるなかで

まさに「習近平の国防法」

太平の眠りを覚ます、暮れの隣国の法改正である。

先週末の12月26日、北京で全国人民代表大会常務委員会第24回会議を開き、中華人民共和国国防法を改正し、今週の2021年元日から施行することとした。習近平国家主席が主席令第67号に署名し、改正が成立した。

国防法は、香港返還を4ヵ月後に控えた江沢民時代の1997年3月に成立。胡錦濤時代の2009年8月に改正された。今回の改正は2度目だが、一言で言えば「習近平の国防法」に変えた格好だ。全70条だったものが72条になり、習近平主席がこだわる部分を改正したからだ。以下、具体的に見ていきたい。

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国防法は全12章立てになっている。第1章「総則」の改正部分の概要は、以下の通りだ。赤字が改正した箇所である。それぞれ下に簡単な解説をつける。

〈 第1条 国防を建設し強固にし、改革開放と社会主義現代化建設の順調な進行を保障し、中華民族の偉大なる復興の実現するため、憲法に基づいて、本法を制定する 〉

習近平政権のスローガンである「中華民族の偉大なる復興の実現」が国防の目的であることを明確にした。

〈 第2条 国家は侵略から防備し抵抗し、武装転覆と分裂を制止し、国家の主権・統一・領土の完備・安全と発展の利益に向けて進行する軍事活動を保衛し、軍事関連の政治・経済・外交・科学技術・教育などの方面の活動のため、本法を適用する 〉

「分裂」という言葉を加えたのは、香港と台湾を意識したからと思われる。「発展の利益」を加えたのは、中国が経済発展するにつれて軍事力も発展していき、それに伴う中国の利益を損なうことがないよう軍事力を使っていくという意思表示だろう。

〈 第3条 国家は武装能力建設を強化し、辺境防衛・海域防衛・空域防衛とその他の重大な安全領域の防衛建設を強化し、国防の科学研究生産を発展させ、全国民に国防教育を普及し、国防の動員体制を完備し、国防の現代化を実現する 〉

「その他の重大な安全領域」とは、主に宇宙空間とサイバー空間を指しているのではないか。以前、習近平主席が人民解放軍の幹部たちに向かって、次のような檄を飛ばしたと聞いたことがある。

「20世紀は陸海空の三軍の戦いだったが、21世紀は『電』(サイバー)と『天』(宇宙)を加えた五軍の戦いになる。『電』と『天』の戦いにおいて、絶対にアメリカ軍に負けてはならない」

 

〈 第4条 国防活動は、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、‘三つの代表’の重要思想、科学的発展観、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想が指導することを堅持し、総合的な国家の安全観を堅持し、新時代の軍事戦略方針を貫徹し、わが国の国際的地位にふさわしく、国家の安全と発展の利益に適応した強固な国防と強大な武装能力を建設する

単純な国防建設の強化を謳っていた旧第4条を、丸ごと書き換えた。5人の個人名が明記されているが、もちろん最重要なのは「習近平」であり、これを入れたいために、過去の人々の名前や政策を列挙したに過ぎない。ここでも「発展の利益」が出てくるが、上記と同意である。