〔PHOTO〕iStock

老人ホームに捨てられた「元一流企業上級管理職老人」の悲惨な最期

「老人ホームに向かない人」の典型例とは

半ば捨てられるように老人ホームへ

Aさんは、一流大学を卒業後、一流大手機械メーカーに就職、その能力を高く評価され、最後は部長職で定年を迎えました。定年後も、会社の功労者として子会社に転籍し手腕を発揮、70歳を過ぎるまで仕事の第1線で活躍されたといいます。

その後、長年連れ添った奥様が病気で他界、独立した子供たちとは距離を置くようになり、長年住み慣れた郊外の一戸建てで1人、静かに老後を過ごしていました。ところが、80歳で脳梗塞を発症、一命はとりとめたものの右半身に麻痺が残りました。そして、広い自宅での独居生活が困難になり「老人ホームへ入居」という運びになったのです。

〔PHOTO〕iStock

老人ホームでの生活ぶりをお話しする前に、脳梗塞後発症後に起きた事実について説明しておきます。

病院を退院後、半身麻痺になったAさんをどうするかの親族会議が開かれ、結果、長男夫婦が同居することになりました。長男夫婦がAさんの自宅に移り住み、同居生活が始まります。

要介護4の認定を受けていたAさんの日常介護は、訪問介護や通所介護の事業者が担います。右半身は麻痺をしていますが、それ以外は特に悪いところはなく、頭も鮮明です。発語にも生活に支障をきたすような問題はありませんでした。

しかしです。同居生活がスタートしてから1年後、Aさんは、半ば捨てられるように、老人ホームに入居することになったのです。理由は一体、何だったのでしょうか?

それは、長男の奥様や在宅介護を支えている介護事業者に対する暴言と暴力でした。自由に動く左手と左足で、長男の奥様や介護職員に対して「殴る」「蹴る」の暴力を振るい、さらには、相手を馬鹿にするような罵声を浴びせるという言動が出現したのです。

最初は、皆、「病気がそうさせているのだから仕方がない」「身体の自由が利かないのだからストレスもたまるはずだ」と考え、どちらかと言うと同情的でした。幾度となく担当ケアマネジャー主催のカンファレンスが開かれ、その都度、関係者間では「支えていく」ことを確認しました。しかし、物事には限度があります。度を超えてしまうと、そうは割り切れません。

 

まず初めに、「Aさんの対応をするなら事業所を辞めたい」という退職希望の介護職員が続出します。ついに、介護事業者からも介護職員の職場環境を考えた場合、「これ以上、Aさんにサービスを提供することは難しい」と言ってサービス辞退の申し出がありました。

さらに追い打ちをかけたのは、介護事業者から見放され、同居していた長男の奥様が、様々な心労から精神を病み、入院治療をしなければならなくなったことです。長男は、このことに怒り心頭、担当ケアマネも長男が納得できる代替え案を提案できず、結局、Aさんを老人ホームへ入居させるという結論に至ったのです。