コロナ禍によって、あぶりだされた問題、余儀なくされた変化、あるいはまったく変わらなかったことも含めて、世の中を俯瞰してみると、ポストコロナの世界は、地球上の人々が同じ問題に対して「考える」きっかけを作りました。現代を生きる私たちに一石を投じたようにも思えるコロナの存在。さまざまな角度から世界を見つめる識者たちに、感じたことを語ってもらいました。

今回、お話を伺ったのは、評論家の荻上チキさんとライターの武田砂鉄さん。新しい持続性と古い持続性について、生活と社会がつながった人が増えることによって政治を動かすような成功例が増える可能性などについて語ってくださいました。

●お話を伺ったのは…
荻上チキ(おぎうえ・ちき)
1981年兵庫県生まれ。2013年よりTBSラジオ「荻上チキ Session-22」パーソナリティ。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表を務め、コロナ以後のいじめ・不登校などに関する要望と方策も発信。著書に『みらいめがね』『災害支援手帖』など。

武田砂鉄(たけだ・さてつ)
1982年東京都生まれ。2019年よりTBSラジオ「ACTION」金曜パーソナリティ。著書に『紋切型社会』『日本の気配』、最新刊に“わかりやすさ”が妄信されて共感ばかりが蔓延る社会の危うさを問う『わかりやすさの罪』がある。

社会を揺るがす大きな変化ではなく、
地道な活動を拾い上げていく作業が必要

ーー自粛要請により働き方や学び方が変わったり、弱者やジェンダーに関する問題が表面化したり、日々動いていくコロナ禍の中で、さまざまな問題が浮き彫りになり、議論を生んでいる。メディアを通じて、社会や政治が抱える問題を顕在化させ、提言してきた2人は、このコロナの後をどう考えるのか。

武田 僕はアフターコロナという言葉に、少し違和感があるんですよね。先日の芸能人の不倫報道を見て、コロナやアメリカ社会、日本の政治のことより、不倫のほうが叩けて気持ち良いと思っている気がしたんです。東日本大震災の時も、芸能ニュースで報道が薄まったことを思い出した。つまり、コロナのようなことがあっても、また強い力で元に戻っていくのではないかという危機感を持っています。

荻上 そうだと思いますよ。経済学では経路依存性と言いますが、これまでこうしてきたんだからそれを継続することが最も低コストだ、あるいは抵抗がないという感覚はものすごく強い。そうした力は、いろいろなところで働くだろうと思います。SDGsも、経路依存性とどういうふうに折り合いをつけていけるか、つまり、新しい持続性と古い持続性をどう妥結させるかということがもともとのテーマなんですよね。

コロナ禍の影響で、リモートワークを取り入れる企業が少し増えるとか、通勤を見直すとか、たぶん全体の2%くらいは変わるところがあると思うんです。ただ、ガラリと変わるほどのものではないし、いろんな価値観が大きく転換するわけでもない。例えば、教育分野において、僕の子供は2人とも不登校ですが、彼らのために空き教室を利用させて欲しいと言っても聞き届けられなかった。さまざまな支援とつながろうにも、それは学校に行けるようになるためのものであって、教師を派遣してもらって家で教育できるような体制ではない。リモート学習が進むことで、学校によってはタブレット経由で授業に参加できるようになったりはあり得ると思いますが、それが一斉授業の形式や、通学中心主義の変化までは至らないだろうと。

すなわち、これまでの社会は大きく揺らがないまま継続すると言えると思うんです。そんな中、これを機に変えようという提言が注目されたり、多くの人が共感すれば、少しずつ状況を変えることができる。より良き方向を過剰に期待せずに、さまざまなアクションを起こしていくことが大切だろうなと思います

〔PHOTO〕iStock

武田 何かを論じる時に、現在より未来ばかり語りたがる人を警戒するようにしています。コロナ禍になってから、既存の仕組みを壊して未来はこうなるというような言い分をする人たちの勢いが、より強くなったように感じるんです。ポストコロナとか、コロナ以降と言った時に出てくる言葉のフレーズや言説に、慎重にならなければいけないはずです