私と付き合うなら「覚悟」が必要かもしれない

社会人になったクリスティーネさんは、歌手になることを夢見てバンド活動をスタート。そのメンバーのひとりが夫だった。

「夫とは20歳のときに出会い、25歳から真剣に付き合い始めました。当時(1980年代)は黒人差別がとてもひどく、黒人は同じ人間として見られていなかったと思います。『黒人は無能だから力仕事や学問を必要としない仕事をするべきだ』『黒人女性はセックスの道具でしかない』といった、今なら考えられない価値観を多くの人が持っていました」(クリスティーネさん)

-AD-

夜、街で遊んでいると知らない人から侮辱される、髪の毛や身体を触られる、電車やバスで皮肉を言われる、なんてことは日常茶飯事だった。クリスティーネさんは、そういった差別を受けるたびに必ず相手の誤りを指摘し、決して屈しなかった。うっとうしさは感じていたが、何日も暗い気持ちを引きずることはなかったという。

明るい笑顔でインタビューに答えてくれたクリスティーネさん。苦労の多い生い立ちを想像できないほど、彼女は前向きなエネルギーに満ちている 写真/クリスティーネさん

「侮辱されたり、嫌なことをされたら、毎回必ず相手に反論していました。彼らと同レベルの悪口を言うのではなく、正統な意見として『黒人は無能ではない。私は白人と同じ教育を受けて、大学で資格も取得している』『黒人は性の道具ではない』といったことを堂々と伝えたんです。私が流暢なデンマーク語を話すと、相手の態度が一変することがよくありました」(クリスティーネさん)

そうやって、常に周囲に付きまとう黒人差別に負けることなく、強く生きてきたクリスティーネさん。夫にも『私と付き合うなら、周囲から悪口や嫌味を言われるかもしれないという覚悟が必要だと思う。でも私が気にしなかったら、あなたも気にしないでほしい』と強い意思を伝えた。