新型コロナ変異種〈VOC-202012/01〉を断つ、意外に身近な方法

進化を妨げるには再感染を遅らせること
更科 功 プロフィール

さきほど、新型コロナウイルスにはエンベロープという膜で包まれていると述べた。このエンベロープは、元はと言えば、感染した細胞の細胞膜を取ってきたものなので、細胞膜と同じ脂質二重膜でできている。その脂質二重膜にスパイクタンパク質などのタンパク質が刺さっているわけだ。新型コロナウイルスを除去するためにアルコールがよく使われるが、アルコールは脂質を溶かすので、このエンベロープを破壊することができるのである。

【図】脂質二重膜脂質二重膜

エンベロープを作っている2つの膜(二重膜)は、それぞれの親水性の部分を外側に、疎水性の部分はお互いに向かい合わせにくっつけるようにして、内側に入れている。ウイルスの外部も内部も基本的には水なので、エンベロープの表面を親水性にしておくと、構造が安定する。

ウイルスを除去するためには、石鹸のような界面活性剤も使われる。界面活性剤は、親水性の部分と疎水性の部分を持っている。この疎水性の部分が、脂質二重膜やタンパク質の疎水性の部分にくっつく。すると、脂質同士や脂質とタンパク質の疎水性の部分の相互作用が不安定になり、エンベロープが破壊されるのである。

このため、界面活性剤を使って手を洗う人は多いだろう。しかし、掌を洗う人は多いけれど、指先を洗う人は意外と少ないらしい。それではあまり意味がないので、今までよりも少し丁寧に手洗いをするだけで、感染確率はかなり下がるかもしれない。

【写真】手洗いも指先まで手寧に手洗いも、指先まで洗うなど、少し丁寧にするだけでも感染確率が下がるかもしれない photo by gettyimages

感染が広がるか収束するかはさまざまな要因によって左右される。ウイルスの感染力はその中の一部にすぎない。もちろん油断してはいけないが、生活を少し見直せば、感染力の上昇を相殺することも不可能ではないだろう。

ウイルスの進化をコントロールする

今回はイギリスで、新型コロナウイルスの変異種が同定された。ウイルスの進化速度は非常に速いので、このように数年あるいは数ヵ月で変異種が現れてくることがある。でも、これには悪い面だけでなく、よい面もある。進化速度が速いせいで、ウイルスの進化はある程度コントロールできるのである。

たとえば、毒性の強いウイルスは、短期間の間に感染した人を殺してしまうので、素早く別の人に再感染しなければならない。一方、毒性の弱いウイルスは、感染した人を殺さないし、もし殺すとしても長い時間がかかる。そのため、人から人へ感染するペースを遅くすれば、毒性が強いウイルスから系統が途絶えていくのである。

今回の変異種の毒性についてははっきりわからないが、明らかに強くなっている証拠は今のところないようだ。新しいデータによって結果がどうなるかはわからないけれど、少なくとも私たちは、ウイルスの進化に対して、まったくの無力ではないのである。

【写真】学校に貼られた感染症対策の工夫を呼びかけるポスター生活の中の工夫で、ウイルスの進化に対抗することはできる photo by gettyimages

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