新型コロナ変異種〈VOC-202012/01〉を断つ、意外に身近な方法

進化を妨げるには再感染を遅らせること
更科 功 プロフィール

仮にウイルスに感染した人は、1日当たり周囲の2人にウイルスを感染させるとしよう。すると、1日目は感染者が1人でも、2日目は新たに2人も感染者が増えてしまう。元から感染していた1人も加えると、感染者は3人だ。3日目は3人がそれぞれ2人ずつ感染者を増やすので、6人も感染者が増えてしまう。元から感染していた3人も加えると、感染者は9人だ。

それでは、感染力が70パーセント強くなった場合はどうなるだろうか。つまり、ウイルスに感染した人が、平均して2×1.7=3.4人にウイルスを感染させる場合である。1日目の感染者が1人だと、2日目は新たに3.4人も感染者が増えてしまう。元から感染していた1人も加えると、感染者は4.4人だ。3日目は4.4人がそれぞれ3.4人ずつ感染者を増やすので、4.4×3.4=14.96人も感染者が増えてしまう。元から感染していた4.4人も加えると、感染者は19.36人だ。

これでは、感染者が70パーセント増えるどころではない。3日目にして軽く2倍を超えてしまう。日が経つにつれて、感染者の数はさらに爆発的に増えていくだろう。う~ん、大変なことになった。何か打つ手はないのだろうか。

【写真】感染力=感染者?感染力70%増で、とんでもない人数の感染者が発生!? photo by gettyimages

拡大と収束の境界

新型コロナウイルスのような感染症が拡大するか収束するかは、再生産数によって決まる。再生産数には、基本再生産数と実効再生産数があり、基本再生産数とは「感染に対する免疫をまったくもたない集団の中で、1人の感染者が感染させる平均の人数」のことである。一方、実効再生産数とは、「すでに感染者がいる集団の中で、1人の感染者が感染させる平均の人数」のことである。ここでは単純化するため、基本再生産数で考える。

一般に感染者は、周囲の人を感染させる力を持つが、その力を永遠に持ち続けるわけではない。免疫を獲得すること、あるいは死亡することによって、感染者は周囲の人への感染力を失う。それまでに何人を感染させるか、その人数が基本再生産数である。

基本再生産数が1より大きければ、感染は拡大していくし、1より小さければ、感染は収束していく。勘違いしやすいが、基本再生産数は0でなくともよい。1より小さければ収束するのである。つまり、感染を収束させるためには、感染者が周りの人を1人も感染させてはいけない、ということはない。いや、もちろん感染させないに越したことはないけれど、1人の感染者から感染する人数が、平均して1人より少なければ、感染は収束していくのである。

この基本再生産数は、ウイルスの感染力とは少し異なる。一般に基本再生産数は以下のように表せる。

基本再生産数=感染期間×接触人数×感染確率

感染期間というのは、感染してから免疫を獲得するまで、あるいは死亡するまでの期間である。感染者が周囲の人を感染させる力を持つのは、この期間だけだ。感染期間は、感染症ごとにほぼ決まった値となっているので、大きく変えることは難しい。

接触人数というのは、単位時間当たりに接触する人数である。これは生活習慣によって大きく変わる値である。満員電車に乗って通勤する場合と、在宅でテレワークをする場合では、一桁はもちろん二桁以上違うかもしれない。

感染確率というのは、接触1回当たりの感染する確率である。ウイルスの感染力が関係してくるのは、この感染確率だ。とはいえ、感染確率もウイルスの感染力だけで決まるわけではない。たとえウイルスの感染力が同じであっても、マスクの着用や手洗いの励行によって、感染確率を大きく下げることも可能である。

【写真】マスクの着用の励行マスクの着用や手洗いの励行によって、感染確率を大きく下げることも可能だ photo by gettyimages

つまり、ウイルスの感染力が70パーセント強くなったとしても、基本再生産数がそのまま70パーセント大きくなるとは限らない。もちろん他の条件がまったく同じであれば、基本再生産数は70パーセント大きくなってしまうけれど、少し気をつけるだけで、他の値は結構下げることができる。

たとえば、睡眠不足によって免疫機能が弱くなることは、ほぼ確かなので、生活を少し規則正しくするだけで、感染確率は少し下がるかもしれない。

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