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トランプ後のアメリカで何が起こるか…巨大テック企業が抱える「深刻な問題」

本当に警戒すべきものは何か?

GoogleとFacebookが直面する難題

すでに2021年1月20日のバイデン次期大統領の就任を控えた「レイムダックシーズン」に入っているにもかかわらず、シリコンバレーのBig-Techに対するアメリカ政府の風当たりは日に日に強くなる一方だ。

2020年12月9日、かねてから噂されていたように、FacebookはFTC(連邦取引委員会)から反トラスト法違反の訴訟を起こされた。それだけでなく同日、46の州とグアムならびにワシントンDCの司法長官から反トラスト法違反で訴えられた。こうなると参加していない州を挙げたほうが早いだろう。不参加だったのはサウスダコタ、サウスカロライナ、アラバマ、ジョージアの4州のみ。つまりこの4州以外の州が全てFacebookに問題ありとみなしたわけだ。

これだけの数になると、当然、各州の担当者たちには、民主党系の人もいれば共和党系の人もいる。もはやFacebookの振る舞いは、党派を超えた案件として認知されている。今回、FTCは連邦法違反として、州司法長官たちはそれぞれの州法違反として訴えを起こしたわけだが、いずれもFacebookが独占的地位を濫用しているという理由で、Facebook傘下にあるInstagramとWhatsAppの企業分割を求めている。

このFacebookに対する訴訟の知らせからほぼ一週間後、Googleが州政府から別々に2件、反トラスト法訴訟を起こされた。ひとつは、12月16日にテキサスを中心に10州の司法長官が提訴したもの。もうひとつは、翌12月17日に、コロラドなど35の州と3つの地域(ワシントンDC、プエルトリコ、グアム)の司法長官が起こしたものだ。これでGoogleは、10月の司法省反トラスト局による訴訟と合わせて3件の反トラスト法訴訟を抱えることになった。いずれもGoogleの検索ならびに検索広告の領域での反トラスト法違反を指摘している。

なお、Googleに対する司法省の訴訟については、3年後の2023年9月12日に審理を開始することも公表された。向こう数年間ものあいだ、Googleは、そしておそらくはFacebookも、訴訟の対処に取り組まなければならない。この他にもAmazonとAppleについても同じく反トラスト法訴訟の可能性が取沙汰されている。どうやらアメリカで本格的にBig-Techの規制のあり方が公に議論されるときを迎えようとしている。

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注目を集める「2つの論文」

今回の訴訟報道で注目を集めているのが、ディナ・スリニヴァサン(Dina Srinivasan)女史だ。彼女の書いた2つの法学論文、すなわち2019年の“The Antitrust Case Against Facebook”と2020年の“Why Google Dominates Advertising Markets”が、いずれの訴訟でも参照されている。どちらも彼女がインターネットの広告取引ビジネスの現場で経験した実践的知識に基づいて書かれたものであり、そこに記された取引慣行の実態が提訴の際に有用だったという。

現在40歳のスリニヴァサンは、大卒後、起業を経験した後、イェール・ロースクールでJD(法学博士)を取得したものの、弁護士にはならず再び起業しインターネットビジネスに携わった。その技術を世界有数の広告コングロマリットであるWPPに売却し、2012年にWPP傘下のKantar Mediaに加わり、2017年に辞めるまでインターネット広告ビジネスの現場を見続けてきた。

学者としてのキャリアは皆無だったが、退社後、自らのインターネット取引の現場経験に基づきFacebookについての論文を書いたところ、幸いバークレー・ビジネス・ローレビューで採用され、法曹関係者の関心を集めることになった。実際、彼女の論文は、タイミングにも恵まれた。2016年大統領選におけるフェイクニュースの流布や、その後明らかになったCambridge AnalyticaによるFacebookからの個人情報の流出など、とにかく2017年を境に、GoogleやFacebookといったシリコンバレーのBig-Techに対する評価は逆転した。すっかり社会の敵とみなされるようになり、マーク・ザッカーバーグやサンダー・ピチャイといったBig-Techの経営者は、連邦議会の公聴会の常連となった。この年末に起こった一連の反トラスト法訴訟もそうした流れから生じた動きのひとつである。

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