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教育は、変えられるーー授業改善ではなく、学びの構造転換を!!

自立と共生のための「学び」の在り方
自立と共生のための『学び』を実現する方法とは?これからの教育が目指すべき在り方を提案した今月発売の新刊『教育は変えられる』の著者で杉並区教育委員会のスタッフを務める山口裕也さんによるオリジナルエッセイをお届けします。山口さんが本書に込めた思いとは??

小学生の「わり算」の事例から

小学校3年生の算数、「わり算」を初めて学ぶ単元でのこと。

――こんなことがありました。

その子は、算数の問題が・・・、「とても苦手」な子でした。でも、算数の時間は・・・、「大好き」な子になりました。

なぜか? 算数の時間が、思い思いに問題を解ける時間だったからです。

もう少し詳しく説明しましょう。

このとき、単元全11時の10時目は、教科書例題

「69まいのおり紙を3人で同じ数ずつ分けます。1人分は何まいになるでしょうか」

がアレンジされ、

69(まい)が「□□」、3(人)が「□」

になり、問題づくりの「条件」として

「おり紙のまい数は、『九九(81)より大きい』」

が設定されていました。

ここで働かせる「数学的な見方・考え方」が、「位分け・乗法九九の二回適用」だからです。この条件がないと、「24÷3」などもOKになってしまうので、前時までの「乗法九九・その一回適用」で解決できてしまいます。

子どもたちは、まず、自分で問題を作ります。一人一台のタブレット端末で全員の問題を共有しますから、自分で作れなかった場合は、他の人の問題がヒントになります。

次は、一人でやるのか、協力してやるのかの選択。もちろん、途中で変えても構いません。じゃあ、場所はどうしよう。誰かの机? それとも? 与えられた時間はおよそ30分で、こんなふうに、それぞれが、自分で自分のことを決めながら、それぞれに学びます。

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ちなみに、先ほどの子は、一目散に黒板の前に飛び出して、同じような問題を作った子たちと一緒に考え始めました。気が付くとそこには大きな協同の輪ができていて、中心ではその子が黒板を使って、一生懸命、計算の仕方を説明しています。苦しみながらも、みんなの支えがあるから楽しそう。

その子の言葉は、大人からすると、とても「拙い」ものです。でも、なんだか周りの子どもたちは理解している。先生の言葉は算数的にも論理的にも「整った」ものですが、だからといって子どもたちに分かりやすいかと言えば、必ずしもそうではない

そうしてこのグループは、みんなでなんとか納得できる計算の仕方の説明、「分けて、九九を使って・・・」にたどり着きました。他の子やグループも、同じような感じです。

 

「勝手」に学び続ける子どもたち

では、先生は、何をしていたのでしょうか。

簡単に言えば、子どもたちに「ツッコミ」を入れていました。

どうやったの?」「それで終わり?」「本当にそれでいいの?

――といった「後追い」で。

「あらかじめ」何もかもを教えるのではなく、思い思いに学ぶ、それぞれの子の解決を、後から追うように支えたり、共に考えたりしていました。そうして時間の終了まで後10分弱というところで、子どもたちと話し合って、まとめ。「じゃあ、今日は、『10の位と1の位に分けると簡単』ってことでいいのかな?」。「あ、そうそう、今日やったのはそれ!!」。

子どもたちは、今日の振り返りを始めます。が、いわば、「100の経験」が「分けると簡単」という「1の言葉」に圧縮されたことで「99の余白」ができ、納得し切れていない部分や、もっと気になることが出てきたよう。多くの子が、「もっとやりたい!!!」とせがんできます。

「ごめんね、今日は無理なんだ。」

でも、子どもたちは、言ってみれば「勝手」に学び続けます。きっと、休み時間や放課後にも、みんなで協力して学び続けたのでしょう。

・・・・・・そうして先生は、次の日の算数の時間で、驚くことになります。「いつの間にか、全員ができるようになっている」状況に。

簡単な場合の2位数÷1位数=2位数の計算が、みんな、できるようになっていたのです。

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