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最期の3週間は水と塩だけ…餓死した無戸籍母と子が直面した「日本社会の闇」

「老齢無戸籍問題」の厳しすぎる実態

コロナ禍でのクリスマス・イブの夜、産経新聞が流した一本のスクープが大きな話題となっている。

「《独自》無戸籍の親子宅で母親餓死 大阪 『助け求められず』」

大阪府高石市で9月、無戸籍の女性が餓死したが、女性は死亡当時78歳とみられ、同居していた息子(自称49歳)も無戸籍だった。「生活費が底をついた。自分たちには戸籍がなく、救急車を呼ぶことや市役所への相談はできなかった」と話したという。

なぜこの母子は社会福祉の網から漏れてしまったのだろうか。なぜ行政はかれらを見つけられなかったのだろうか。

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令和時代の『誰も知らない』 

「母親が亡くなった」。息子が近所の男性に助けを求めてきたのは今年の9月のことだった。男性が自宅を訪ねたところ、住人の高齢女性が布団の上で倒れており、既に死亡していた。餓死だった。

女性は内縁の夫と息子と3人暮らしだったが、2016年に夫が死亡。その遺産の数百万円を切り崩して生活していた。最近は老齢となり、歩けなくなった女性を息子が介護していたという。

夫の遺産で生活していたが底をつき、息子は知り合いに借金を申し込んで断られ、代わりにそうめんをもらい、女性と一緒に食べたのが最後の食事だった。最期の3週間は塩と水だけを与えていたという。

女性は長崎の五島列島出身で戦災孤児だった可能性もあるというが、母子ともに無戸籍となった理由は不明である。母子が在住していた高石市の阪口伸六市長は「行政に相談なく死亡されたことは非常に残念です。今後、こうしたことが発生しないようにしっかりサポートして参りたい」とのコメントを出している。

だが、無戸籍者の多くは長期に渡る無戸籍者として生きていく中では、幾度かにわたって行政にアプローチをするものの、対応が悪く、犯罪者のように扱われるといったケースも少なからずあり、亡くなった女性が一度も相談に行かなかったとは考えにくいとも思う。