何が起きていたのか…“官邸の守護神”の定年延長問題が与えた「大きな衝撃」

『安倍・菅政権vs.検察庁』(2)
村山 治 プロフィール

閣議決定の衝撃

黒川の勤務延長は、多くの法務・検察関係者やマスコミにとって衝撃のニュースとなった。

それが決まった1月31日、別の中堅検察幹部は「まずは、ひたすら『驚き』というのが平均的反応。何が起こったのか、起こるのか、理解が追い付かず、様子見というところでしょうか。ちょうど今夜、名古屋では(林の)ご栄転を前提の送別会が開催予定との未確認情報もあり、ちょっといたたまれない気持ちになります」と検察庁内の様子を伝えてきた。

旧知のNHKの元司法記者は「驚きましたー。こんなやり方があるのですね。林さんの目がこれでなくなったということですね。官邸介入と(いろいろなメディアによって)また書かれるんでしょうね。私は黒川さん、買ってるのですが」とのメールを筆者に寄せた。

東京地検特捜部副部長、同特捜部長、次席検事、検事正として政界汚職や大型経済事件を摘発した弁護士の石川達紘は「びっくりした。あんなことあるのかと。(検事総長は)黒川氏がいいのに決まっているが、林氏もいたたまれない。そっちも可哀そう。稲田総長が気を利かせて早めに辞めればよかったのに」と話した。

 

先に触れたように石川は、林が捜査を担当した第一勧銀の総会屋への利益供与事件、黒川が捜査を担当した新井将敬事件のころの東京地検検事正だ。2人を高く評価していた。

石川は、政府が国家公務員法にもとづき勤務延長したことについて「国家公務員法は適用範囲の広い一般法。検察庁法は特定の事項を定める特別法。特別法は一般法より優先されるのが普通の法律解釈だ」と指摘した。つまり、本来は検察庁法が想定する「定年がきたら退官する」との定年規定が優先され、検察庁法に規定のない勤務延長を国家公務員法を根拠に行うのは筋ワルだとみたのだ。

石川から特捜部長を引き継ぎ、金丸信元自民党副総裁の政治資金規正法違反や脱税事件を摘発した弁護士の五十嵐紀男はより深刻に受け止めた。

「勤務延長したのは、内閣が黒川氏を次期検事総長に据えようとしているということ。林氏を後継とする稲田総長の人事案が受け入れられなかったということだ。内閣はそこまでやるのか」と古巣を案じた。

「次期検事総長は林で決まり」となっていたはずがなぜ……。黒川の勤務延長決定後、林は数日間、姿を消した。何が起きていたのか。つづきは『安倍・菅政権vs.検察庁』でお楽しみください。

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