〔PHOTO〕Wikimedia Commons

何が起きていたのか…“官邸の守護神”の定年延長問題が与えた「大きな衝撃」

『安倍・菅政権vs.検察庁』(2)
2020年に大きな騒動となった黒川弘務・東京高検検事長の「定年延長」問題とは何だったのか? なぜ黒川は「官邸の守護神」と呼ばれるのか? 2016年に始まった安倍政権による法務・検察首脳人事への介入と検察側の抵抗。検察取材の第一人者が極秘情報を駆使してその全容を描いた『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(文藝春秋)より特別掲載!

検事総長含みの勤務延長人事

「定年延長です」

その短いメールが筆者に届いたのは2020年1月31日朝。2月7日に63歳の定年を控えた東京高検検事長の黒川弘務について、政府が、定年後も継続して半年間、勤務を延長すると決めた。そのことを、黒川に近い検察幹部が連絡してきたのだ。

この検事がいう「定年延長」は「勤務延長」のことである。定年を迎えた後、引き続き勤務することをいう。

東京高検ウェブサイトより

この検事と筆者は、しばらく前から、定年を間近に控えた黒川の処遇のシミュレーションで、「退官」や「検事長のまま勤務続行」などの議論をしていた。その際、「定年後の勤務の延長」について「定年延長」という言い方で話していた。それゆえ、この検事は、勤務延長を「定年延長」と記して連絡してきたのだ。

それもあって、筆者はインターネット新聞「法と経済のジャーナル Asahi Judiciary」のコラムなどで1月31日以来、黒川の勤務延長について、「定年延長」と記してきた。ただ今回、書籍を編むに際し、正確な表現にすることにした。

 

日本の検察制度の基本法となる検察庁法は「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」(第22条)と定めている。定年の引き上げや勤務延長の規定はない。

この検察庁法22条に従い、検事総長をはじめ定年を迎えた検察官は例外なく退官してきた。検察官の勤務が定年後に延長されるのは前代未聞だった。そこまでして黒川を検察官の身分にとどめるのは、検事総長の稲田の後継に黒川を起用する含みがあるのは明らかだった。