結局、「甘利事件」とは何だったのか? 多くの人が知らない「捜査の真相」

『安倍・菅政権vs.検察庁』(1)
村山 治 プロフィール

「守れないか」の相談に「無理」

官邸筋によると、文春報道を受けて官邸は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を担当している甘利を守るため「甘利対策チーム」を発足させ、法務省官房長の黒川にも何とか辞職させないで済む方法はないかと相談した。しかし、黒川は、カネの授受がある以上、大臣に留まるのは無理でしょう、と取りつく島もなかったという。すると、なぜか甘利が検察に逮捕されるのではないか、との憶測が永田町に広まった。

一方、特捜部は当初、1月中にも政治資金規正法違反容疑で関係先を捜索しようとしていた。しかし、法務省刑事局は甘利が現金を受け取っていても、どの政治団体で処理するかは政治家の自由であり、立件するには金額も小さすぎ、いざ、強制捜査しても起訴できない恐れがある、として慎重に捜査するよう特捜部にアドバイスしたという。これは、後に述べる、検察の「起訴基準」にかかわる話だ。

 

検察は2010年に摘発した元民主党代表、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」を舞台にした政治資金規正法違反事件で小沢を起訴できず、その後、検察審査会が強制起訴したものの無罪となった。その過程で検察側の捜査の不手際が露呈し、世論の批判を浴びるなど痛い目にあってもいた。

甘利について特捜部は検討の結果、同容疑での訴追は難しいと判断。ターゲットをあっせん利得処罰法違反に切り替えて内偵を進めたが、同違反容疑での捜索は4月にずれ込んだ。その間に、国会の予算や法案審議は順調に進んだ。

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