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結局、「甘利事件」とは何だったのか? 多くの人が知らない「捜査の真相」

『安倍・菅政権vs.検察庁』(1)
2020年に大きな騒動となった黒川弘務・東京高検検事長の「定年延長」問題とは何だったのか? なぜ黒川は「官邸の守護神」と呼ばれるのか? 2016年に始まった安倍政権による法務・検察首脳人事への介入と検察側の抵抗。検察取材の第一人者が極秘情報を駆使してその全容を描いた『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(文藝春秋)より特別掲載!

600万円受領を認めても不起訴

黒川弘務は、野党や一部のマスコミから「官邸の守護神と呼ばれている」などと評されてきた。黒川がそう呼ばれてきたことは事実だ。それにはどのような根拠があったのか。本章では、法務省官房長、事務次官時代の黒川と政界、そして、黒川と検察の関係について検証する。

よく引き合いに出されるのが、検察が不起訴処分にした「甘利事件」と「森友事件」だ。2つの事件を通して、当時の筆者の取材メモをもとに、「黒川守護神」の実像を考察したい。

まず、甘利事件。2016年1月20日、「文春オンライン」は、経済再生相の甘利明の地元事務所が、千葉県の建設会社の総務担当者から現金と飲食接待を合わせ総額1200万円の利益供与を受けていた疑いがあると報じた。担当者は甘利や秘書とのやりとりを隠し録音していた。甘利は、自らと元公設第1秘書が計600万円を受け取ったことを認め28日、経済再生相を辞任した。

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建設会社に隣接する県道の用地買収に伴う補償をめぐり、建設会社と独立行政法人都市再生機構(UR)の間でトラブルが起きていた。実名で文春の取材に応じた建設会社の総務担当者は補償交渉に関し「甘利事務所に口利きを依頼し、見返りとして現金や接待で1200万円を渡した」と証言。甘利の政党支部などの政治資金収支報告書には、同社からの寄付は376万円しか記載されていなかった。甘利の秘書がURと接触したあと、URは建設会社との交渉に応じ、2億2000万円の補償金を出していたことも判明した。

市民団体などからあっせん利得処罰法違反や政治資金規正法違反の疑いで、告発を受けた東京地検特捜部は4月8日、UR千葉業務部や建設会社などをあっせん利得処罰法違反容疑で捜索。甘利本人からも任意で事情聴取したが、甘利側がURに対して不正な口利きをした事実は確認できなかったとして5月31日、甘利と関係した元秘書2人を不起訴(嫌疑不十分)とした。

外形的には、不透明極まる政官界疑惑だった。検察が起訴しなかったのは、官邸に忖度して捜査を手控えたのではないか、それを、官邸に近いとされ、当時、法務省官房長だった黒川が主導したのではないか、との疑念が野党やマスコミの一部に広がった。

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