一本の丸太から製品ができるまで。林業の流通とは?

飲食物の包装、歯ブラシ、キッチン容器をはじめ、私たちの身の回りにはプラ製品であふれている。郊外や地方に比べ緑が少ない都心に住む人たちは、CO2を吸収し、雨水を蓄え、生物多様性の保全など、私たちの暮らしを影で支える森林を、身近に感じながら暮らすことはまず難しいだろう。

そんな森林を支える林業が、一体どのような過程で流通し、成り立っているかを知るために、「東京・森と市庭」を訪問。子どもの頃から木材を身近に扱うことで、人と森との関わりについて主体的に考えられるよう、幼稚園、保育園、小学校などで使われる木育遊具や森林での遊びと学びを提供。製材所では、丸太から板になるまでのプロセスを間近で見学させてもらえる。

製材所に積み上げられた多摩産の間伐材

本来ならば、原木市場で丸太を競り落とし、そこから製材所で木材を加工し、材木屋をはじめとする流通業者を経て、ハウスメーカーや工務店をはじめとする業者が製材所から柱などの木材製品を購入する。ところが「東京・森と市庭」では、木材の伐採から、消費者へ届けるところまで一貫して行っている。

「東京・森と市庭」営業部長 菅原和利さん

幼い頃から木に触れさせる木育は、将来子どもたちが木のある暮らしを取り入れる原体験につながる。「以前、遊具を提供した保育園の先生が『今の世の中は、バーチャルな遊びがあふれています。暮らしの中に木材を取り入れることは、感覚を研ぎ澄ますことにつながる』とおっしゃっていましたが、私たちが実践しようとしているのは、まさにそういうことです」と、語るのは「東京・森と市庭」営業部長 菅原和利さん。

「東京・森と市庭」がメインでマネタイズしているのはオーダーメイドの木育遊具。例えば「園内にあるいちょうの木を使って、何か面白いものをつくれないか?」という保育園からのリクエストにツリーハウスを、「教室に整頓スペースが欲しい」というリクエストには収納棚をつくったり。また、木製の虫眼鏡や鳥の鳴き声に似た音がなるバードコールをつくるなど、子どもたちに“本物の木材”に触れ、遊んでもらいながら木材の付加価値を高めるためのおもちゃづくりも行っている。

伐採した丸太の皮を向き、板割りをしたのち丁寧に削られた木材のなめらかな手触りに驚く一同

さらに森林空間を利用して起業したい人をターゲットにしたワークショップの開催や、2020年11月には、日本郵政とともに、奥多摩町の山頂にある家へドローンを使い物資を届ける空中輸送の検証をするなど、あらゆる角度から森林の可能性を伝える活動を続けている。

職人の手により丁寧につくられた美しい製品。木材でできた猫のキーホルダー300円
ヒノキのお椀10,000円。お椀をつくる過程を見た自閉症の園児が、お椀に向かって「ありがとう」と言ったという心温まるエピソードを聞かせてもらった

今後、少子化の影響により、どんどん子どもの数が減り木育遊具の需要も減っていくかもしれない。「東京・森と市庭」の将来像について、営業部長 菅原和利さんは次のように答えた。

「これからは、保育・幼稚園も選ばれる時代なっていくのではないでしょうか。流行りの人気キャラクターを好む園と、森林など自然との距離を大切にしている園。園長先生の価値観によって園の経営理念はまったく異なります。この先、私たちは“木育”の継承者として、自然と仲良くなれる“日本なりの遊具の在り方”を木育遊具といった形で、中国や台湾など海外に向けても伝えていけたらと思っています」

これまで木材の魅力がうまく企業に伝わらず、本質的な部分ではないところが評価されるなど、苦しんだ時期も長かったという。けれど新型コロナウイルスの影響でソーシャルディスタンスを保たなくてはならない昨今、求められているのは森林空間であることを再認識した菅原さんは、「今ならもっと森林の良さを伝えられるし、分かってもらえるのではないか」と語る。

「森も海もみんなつながっていますよね。森の生態系を守ることは、私たち人間が生きていくうえでいかに重要だと教えていくことが大事。なので、木育遊具などを使って子どもの頃から木に触れて暮らすというのは、すごく良いことだと思います」(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長 島田由香さん)

自然との向き合い方を知るひとつのきっかけとして、「東京・森と市庭」の可能性は、これからどんどん広がりを見せていくだろう。

DATA
東京・森と市庭
東京都西多摩郡奥多摩町氷川1075
TEL:0120-022-318
https://mori2ichiba.tokyo.jp/