「死んでしまった彼氏と体をつなげたい…」女子高生の取った「選択」が起こす戦慄のホラー

「死がふたりを分かつまで」――そんな言葉があるように、愛し合う者たちにも今生の別れはいつか訪れる。だが、それが「今」だったら、あなたは何を思うだろうか。

『アフタヌーン』で連載中の漫画『青野くんに触りたいから死にたい』(椎名うみ)がSNSを中心に、大きな話題を呼んでいる。主人公の女子高生・刈谷優里は、はじめてできた彼氏の青野くんとささやかで甘い青春の日々を過ごしていた。

ところが、青野くんは不慮の事故で死亡。一人取り残され絶望した優里の前に、幽霊になった青野くんが現れるのだが、もちろん再び触れ合うことは叶わない。優里は、「青野くんに触りたいから死にたい」と決断するのだが…。

優里の取った「行動」が巻き起こす戦慄の展開は、息をのむホラーの連続。だが一方で、生者と死者…断絶した世界にいるふたりによる濃密なラブストーリーでもある。カルト的人気を誇る本作の作者・椎名うみさんと担当編集に物語の構想を聞いた。

「あぁもう自由に生きよう」そう決めた

――本日はよろしくお願いします。

椎名:よろしくお願いします!

担当編集:よろしくお願いします!

——椎名さんにとって、『青野くんに触りたいから死にたい』が初連載作品ということですが、まず、椎名さんがマンガを描き始めたキッカケを教えていただけますか?

椎名:はい。ちっちゃい時からちょこちょこ落書きみたいなことはしていたけれど、ちゃんと「漫画」を書き出したのは23歳からです。生まれた時から魂がオタクなのでオタクなことはずっとしたかったんですけど、あんまりそういうことをしてこなくて…。

21歳くらいの時に、「あぁもう自由に生きよう。よしオタクになろう」と思って。アニメや漫画にたくさん触れ始めてから、漫画も描きだしたって感じです。

担当編集:なんで漫画にしたんですか? 「オタク表現」をするなら、小説でもよかったんじゃ?

椎名:小説が書けなかったのもあるし、漫画の方が読んでもらいやすいかなぁって。それで、独学で始めました。

担当編集:今は線画までがアナログで仕上げはデジタルだけど、最初はフルデジタルだったんですよね。

椎名:すごく貧乏だったからアナログの道具が買えなくて(笑)。デジタルはソフトだけあれば書けるかなと…。それに、尋常じゃなく下手だったので左右反転とか自由変形ができないと成り立たなかったんですよね。ただ、デジタルを使っていても地獄のようでした。とにかく絵が書けないので。

担当編集:よくそれで漫画を描き続けられましたよね。

椎名:最初の頃は、pixivに2~3枚とかで上げていた程度で、漫画とは言えない感じでした。ネットなら物語として成立してない“ぶったぎり”であげてもいいじゃないですか。「物語として成立させよう」と思って書いたのは、「太っちょバレリーナのみつこ」からです。意志が弱いのでだらだら描いてたら、42ページに半年くらいかかっちゃいましたが。

『太っちょバレリーナのみつこ』(椎名うみ)より

――アフタヌーンの新人賞(四季賞)に投稿して佳作を受賞された作品ですね。

担当編集:実は、私この時はまだ、自分が椎名さんに感じている面白さがなんなのかよくわかっていなかったんですよ。だから、すごい力があることは間違いないのに「次はこういうものを書いたらどうですか」という具体的な提案ができなかった。

例えば「このキャラクターのこういう感じが好きだから、ぜひそういうものを書いてほしい」って言える作家さんもいるんですけど…椎名さんには言えなかった。だから、次の短編は「すきなものをとりあえず描いてください」って雑な投げ方をした気がします。

椎名:そういえば、一番最初に会った時に「好きな漫画は何?」って色々聞いてきましたもんね。

担当編集:うん。その時は、「寄生獣」「ちはやふる」「エマ」…とか、どエンタメばっかり出てきたんですよね。

椎名:どエンタメ、かつ大河系!

 

担当編集:「みつこ」の時は、まだ椎名さんの才能の形がわからなかったけど、本人の志向としてはどエンタメだった。だから、ピーキーな方向を志向する人じゃなさそうだということは感じていたんですが……後々わかったのが「他人に伝わらないと虚無だ」と強く思っている人だってことだったんですよね。