2014年に13年間のOL生活からライターへとキャリアチェンジ。2020年からデンマークに移住、現在はデンマーク・フィンランドの2拠点生活を送る小林香織さんの連載。今回のテーマは結婚後の「姓」の選択肢と在り方について。フィンランド・デンマークに住む3組の国際夫婦をインタビュー。

日本では、結婚の際、女性が姓を変える割合が96%にも上るという。しかし、最新の調査結果(※)で、約7割の人が結婚後も本人の希望により旧姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓」に賛成していると判明。にもかかわらず、この12月、日本では自民党内での批判が相次いだことから「選択的夫婦別姓」の実現が遠のいてしまった。

※早稲田大学・棚村政行教授の棚村研究室と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」による、全国の60歳未満の成人男女7,000人を対象に実施した選択的夫婦別姓制度に関する調査

海外では、「ジェンダー平等」や「個人の不平等をなくす」といった観点から、すでに夫婦別姓が認められている国も多い。そこで、夫婦別姓をはじめ姓の多様な選択肢を持つ北欧フィンランド・デンマークに住む3組の国際夫婦に、「姓」の選択について価値観を聞いた。

個人の意思がとことん尊重された両国の「姓名法」

まずは、デンマーク、及びフィンランドで法律婚の際に選択できる「姓」について紹介したい。基本的に、両国ともに以下4つの選択肢から選ぶことになる。

A、ふたりとも旧姓を維持する
B、どちらかを複合姓にする
C、ふたりとも複合姓にする
D、どちらかの姓に統一する

複合姓の補足事項として、姓は最大2つまでとなり、3つ以上は選べない。また、祖父母や曽祖父母など、いくつか世代をさかのぼった先祖の姓を使うこともできる。これだけでも、日本とは比べ物にならないほど選択肢の幅が多いが、両国にはさらなるオプションが用意されている。

レアケースだが、デンマークでは500クローネ(約8,500円)の申請料を支払って「改姓」することも可能で、変更後の姓は旧姓と同じように扱える。「アンデルセン」など有名な姓が人気だという。

個人の価値観を大事にするデンマークやフィンランド。コペンハーゲンは姓だけでなく、結婚制度自体も柔軟で、事実婚も認められている 撮影/小林香織

一方、フィンランドでは、新しく「姓をつくる」ことができる。既存の中から理想の姓を選ぶのも良し、世の中に存在していない、まったく新しい姓をつくるのも良し。この場合、複合姓を選ぶことはできず、夫婦で統一した単一の姓となる。

両国の姓名法からは、極限まで「個人の意思を尊重する」という意思が見られる。加えて、姓を変える場合に、諸々の手続きがオンラインで完結し、国民の負担にならないよう配慮されている点も日本にはないメリットだろう。ただし、姓名法があまりに複雑すぎるゆえ、現地に長年住んでいる人でさえも、すべてを把握できていないという側面もある。