©︎M-1グランプリ事務局

M-1優勝マヂカルラブリーは「漫才」なのか? 審査員コメントから見えた「大会の変化と醍醐味」

“わかりやすい”バカバカしさが爆発した

「漫才」とは何だろう

「これぞ漫才っていうのを久しぶりにみせてもらった感じがしましたねぇ」

2019年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で、ミルクボーイの1本目のネタを見た審査員の松本人志はそう評した。

確かに、“行ったり来たり漫才”と松本が呼んだ彼らのスタイルは、センターマイクの前に立った2人の掛け合いだけで客席を笑いの渦に巻き込んでいく、そんな漫才という芸のど真ん中を射抜くものだった。そして、2019年のチャンピオンとなったのは、「これぞ漫才」を見せつけた彼らだった。

そこから1年、2020年のM-1はマヂカルラブリーがその頂点に立った。舞台の上を野田クリスタルが縦横に動き回る漫才で、2人は会場の大きな笑いをさらう。その個性的なスタイルは、「これぞ漫才」の対極にあるかのようだ。

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もちろん、何が漫才かという問いに正解を見つけるのは難しい。

昨年のM-1ですゑひろがりずが狂言風の異色漫才を見せた際、審査員の富澤たけし(サンドウィッチマン)は、「漫才は笑わせれば何でもありだと思ってるんで。彼らが上位にいって漫才をぶっ壊してもらって、また新しいものを作ってもらえれば」とコメントした。マヂカルラブリーの漫才は、そんな「笑わせれば何でもあり」を体現するものだったといえるかもしれない。

「これぞ漫才」と「笑わせれば何でもあり」――。保守と革新、正統と異端などと言い換えることもできる2つの極の間を、M-1の審査はこれまでも振れ、その都度ドラマを生んできた。

昨年でいえば3位につけていた和牛を最終出番のぺこぱが捲ってファイナルステージに進出した瞬間がそうだっただろう。ミルクボーイからマヂカルラブリーへのチャンピオンの変化は、その振幅を象徴するものだ。そんな今年のM-1について、審査員のコメントを通して振り返ってみたい。