トレーニングするラグビー日本代表。2019年10月17日、秩父宮ラグビー場。Photo by GettyImages

チャンスを最大に生かすレジリエンス

ラグビー日本代表の躍進の原動力
ラグビーワールドカップ2015年イングランド大会で、日本代表が強豪・南アフリカ代表に「スポーツ史上最大の番狂わせ」と呼ばれる勝利を得た記憶は、まだまだ新しいのではないだろうか。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチに請われて日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織氏は、成功には「ハードワークとレジリエンス」が必要だと唱える。話題書『リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力』から「レジリエンス」の力をお伝えしよう。

マインドセットを前向きにする「レジリエンス」の力

適切な姿勢でハードワークを重ねていても、うまくいかない局面に出合うこともあるでしょう。ハードワークしているのに進化できない、上達しないということも多々あります。そんなとき、私たちはどうしたらいいのでしょうか。

これまでは、ストレッサー(ストレスの原因となりうるできごと)を突きとめ、対処、対応していく「コーピング」と呼ばれるスキルが必要とされてきました。例えば、上司の存在がストレス要因になっているなら、部署替えをしてもらう。そこまでではないのなら、同僚や先輩に愚痴を聞いてもらって発散する。そんなふうに、ストレスに対処する術を見つけることに心を砕いていました。

現在はコーピングに代わり、「レジリエンス」というスキルが、広く認められるようになってきました。レジリエンスとは、思考と行動の過程を変化させることにより、できるだけ前向きに挑戦できる習慣を身に付ける力です。

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日本では、「逆境に耐えうる性格や忍耐力」や「心の回復力」、「自然治癒力」などと表現されることが多いようですが、心理学的には少し違います。というのも、治癒や回復と言うと、「元に戻りたい」「現状がマイナスだから、ゼロに戻したい」といったイメージがあります。これは、もともと「レジリエンス」という単語が物理的な反発によって元通りになるという意味合いを持つからかもしれません。

しかし、心理学で使われるレジリエンスとは、過去の状態に戻す力のことではありません。たとえ経験しなくてもいいような困難なことに遭遇したとしても、自ら前向きに歩んでいけるよう、自分自身を進化させていくような能力、それがレジリエンスです。