宇宙に存在するかもしれない第二の地球。それを見つけるための新しいアイデアが検討されている。鍵になるのは、一般相対性理論と太陽だ。
アインシュタインの一般相対性理論は、時空が重力によって曲がることを予測した。光も時空に沿って進むので、質量の大きな物体の近くでは大きく曲げられる。
実際に、遠くにある天体の光が、手前にある銀河などの重力で曲げられるのが、「重力レンズ」という現象だ。特に、遠くの天体の光がリング状になっている「アインシュタインリング」では、遠くの天体の形が拡大されたり、明るく見えたりする。
地球の約33万倍の質量がある太陽でも重力レンズは起こる。そこでNASAのジェット推進研究所(JPL)のトゥリシェフ氏らは、太陽の重力レンズを利用して、太陽系の外にある惑星(系外惑星)の表面の様子を観測するという計画を検討中だ※1。
太陽系に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリ(約4.2光年)には地球に近い大きさの惑星があることが、間接的な観測でわかっている。そうした小さな地球型系外惑星が放つ光は、現在の望遠鏡では直接観測できないが、太陽の重力レンズで増幅すればとらえられるかもしれない。
100光年ほどの距離にある系外惑星を、太陽重力レンズを使って観測すると、光の明るさが1000億倍に増幅される。さらに表面を25キロメートル程度という高解像度で撮像できる。
これは1968年にアポロ8号が撮影した、「地球の出」の写真と同じくらいの解像度だという。また、光のスペクトル分析から大気の成分がわかる可能性もある。
トゥリシェフ氏らは12月12日にインターネット上で公開した論文で、太陽重力レンズを使った系外惑星観測のシミュレーション画像を発表した※2。これは地球がプロキシマ・ケンタウリの距離にあったら、太陽重力レンズを使った観測でどのように見えるかを表したものだ。画像処理をおこなった後の画像では、大陸の形まではっきり見える。
地球型惑星の表面に海があるかどうか。大気に生命に関係のある分子が含まれているのか。そういったことがわかれば、そこがハビタブルな(生命に適した)惑星かどうかを知るてがかりになる。