元ラグビー日本代表メンタルコーチが提案する「組織を変革に導くリーダーシップ」

荒木 香織

意味を持たないゲームでもプライドを持って戦う

そして、4年後の2019年11月3日。ラグビーW杯日本大会が閉幕しました。日本代表チームは、アイルランドやスコットランドなどの強豪国を含む4ヵ国に勝利して、予選を1位で突破、ラグビー史上初となるベスト8へ進出しました。

準々決勝では南アフリカに敗れたものの、大会はどの試合も満員で、テレビ中継の視聴率は日本戦以外でも高視聴率をマーク。以前からのラグビーファンだけでなく、初めて試合を見たという新たなファンをも、大いに沸かせてくれました。初めての自国開催は大成功だったと言えるでしょう。

 

私がチームのメンタルコーチを務めた2015年イングランド大会を戦ったプレイヤーは、キャプテンのリーチ・マイケル選手を始め、10人がメンバー入りしました。リーチ選手が開幕前に、「やっている方向性は間違っていない。前回大会よりもジャパンは進歩している」と発言したように、選手たちは大きく成長した姿を見せました。

4年前の日本代表チームが選びとった、あの「逆転のスクラム」。そこから、チームは成長を続けています。

2019年大会でも4年前のこの逆転場面は何度もテレビで放送されました。それほど衝撃を与えた出来事だったのでしょう。しかし、エディーさんは違いました。実は今回のW杯期間中、エディーさんと話をする機会がありました。その際、15年大会をこのように振り返っていました。

「2015年のワールドカップで一番思い出に残っているのはアメリカ戦だよ。どれだけ大差で勝とうが、準々決勝には行けない状況だ。意味を持たないゲームだった。それなのに、ジャパンの選手たちはプライドを持って戦ってくれた」

そのアメリカ戦の前、エディーさんは選手たちに話しました。

「難しい試合だ。でも、どうかプライドを持って戦ってほしい」

あのエディーさんが泣いていました。外から見れば、「捨て試合」です。何を目指してプレーするのか非常に難しい。でも、選手は全力で戦い切りました。W杯を戦い切ったのです。アメリカ戦は南アフリカ戦以上に、19年へつながる40分間だったのかもしれません。

彼らが戦う姿を見ながら、私はこう考えました。日本人のメンタルには、より輝ける才能がある。真摯で素直で、他者のために体を張れるメンタルがある。これに正しいリーダーシップを身につければ、より世界と伍していけるのではないか――。

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