ラグビーワールドカップ・イングランド大会、2015年9月19日、南アフリカに勝利した日本代表。Photo by gettyimages

元ラグビー日本代表メンタルコーチが提案する「組織を変革に導くリーダーシップ」

2019年に日本で開催されたラグビーのワールドカップには、総計で延べ170万人もの観客が押し寄せた。「にわかファン」という流行語も生むほどの大ブームになったきっかけが、その前のイングランド大会で日本代表チームが善戦したことにあるのは紛れもない事実だろう。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチに請われて日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織氏は一方で、チーム作りの一翼を担った経験から、日本の組織における若手層のリーダーシップ欠如に懸念を持つという。日本社会のリーダーシップの何が問題か、話題書『リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力』から紹介しよう。

何度でも味わいたい「スポーツ史上最大の番狂わせ」

約4年前の2015年9月19日――ラグビーワールドカップ(W杯)イングランド大会。日本代表チームは、予選プール初戦の対南アフリカ戦に臨んでいました。両チームとも一歩も引かず、白熱する試合の終了直前。電光掲示板はすでに81分でロスタイムに入ったことを示しています。

「スクラム」

肩で大きく息をしていたリーチ・マイケル選手が、レフリーに告げます。そして、ロスタイムのギリギリの時間帯で日本の選手たちがスクラムを組み始めると、会場全体が異様な雰囲気に包まれました。

29対32の僅差で負けている状況で南アフリカの選手がペナルティーを犯したため、日本が敵陣深くで得点するチャンスを得たのです。五郎丸歩選手のペナルティーキックで確実に3点を取りに行くか、スクラムまたはラインアウトからトライ(5点)を狙いにいくか――ラストワンプレー、勝負を決める選択肢が日本代表に与えられた場面のことです。

エディー・ジョーンズ。Photo by gettyimages
 

当時のヘッドコーチ、エディーさん(エディー・ジョーンズ氏)の指示は、ペナルティーキック。手堅く3点を取って同点に持ち込む狙いでした。過去のW杯で2度の優勝を誇る、当時世界ランキング3位の南アフリカに引き分けただけでも快挙です。

しかし、マイケルたち選手の判断は違いました。彼らが一瞬も迷わず選んだのは、逆転のスクラム。そしてスクラムが始まると、日本は自分たちより体重の重い南アフリカに押し勝ち、激しいプレッシャーを受けながらもパスをつないでいきます。最後は、カーン・ヘスケス選手が左端ギリギリへ突き進み、トライに持ち込んだのです。

試合結果は、ご存じの通り。34対32で日本が歴史的な逆転劇を果たしました。それは、英国メディアが「スポーツ史上最大の番狂わせ」と報じたほど、衝撃的な出来事でした。