コロナ禍の最中「3人のボクサー」が地球の裏側まで追い求めたもの

あしたのリングに上がるために(後編)

2020年、世界は変容した。スポーツ界も例外ではなく、ボクシングの試合も相次いで中止になった。そんな中、あえて海外に活路を見出したのがピューマ渡久地ボクシングジムだ。

一行を羽田で見送ったのは12月8日の午後。目的地のドミニカ共和国までは、飛行機を3回も乗り継ぐ長旅だが、そろそろ到着か、というタイミングで一本の短いメールが届いた。「予定がすべてひっくり返りそうです」――。

⇒前編(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78303
⇒中編(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78407

「ハメられたかもしれない」

何かがおかしい……。

渡久地聡美会長が最初にそう気づいたのは、ホテルに到着したときだったという。フロントで何度確認しても、部屋の予約が入っていないというのだ。絶対にそんなはずはなかった。だが、宿泊者名簿に彼らの名前はなかった。

「この時点で、もしかしたら、と思いました。今回、わたしたちの宿泊先を知っているのは数人の関係者しかいませんでしたから」

どうやら“誰か”が勝手に予約をキャンセルしたようだった。ホテルは早割で押さえていたが、仕方なく正規料金でチェックインした。長距離の移動で疲れている選手たちを一刻も早く休ませてやりたかった。

いったい誰が……。

かすかな疑念は、相手プロモーターのSNSを見て確信に変わった。あろうことか、これから共同で執り行うはずの記者会見がすでに終わっていたのだ。しかも、興業の主催者であるピューマ渡久地ジムついてはいっさい紹介がなかった。ジムの所属選手であるデスティノ・ジャパンの祖国ドミニカと日本の友好親善試合であることにも触れられていない。

「それだけじゃなくて、コブラ(諏訪)の対戦相手が変わったということも一方的に知らされて、タイトルマッチについてははぐらかされました」

もともとの話では、コブラ諏訪とデスティノの両選手については、それぞれミドル級とスーパーライト級のWBCラテンシルバータイトルをかけるはずだった。デスティノも欲しがっていたベルトだ。

 

そのことを相手陣営に直接問いただすと、うやむやにされた。その代わり、主催者として支払うべき運営費用をすみやかに振り込むよう急かされた。タイトルマッチの承認がまだ取れていない可能性もあった。

「これはハメられたかもしれないと思いました……」