これまでの「童貞」をテーマにしたドラマや映画とは一線を画す作品として注目を集めている、テレビ東京の深夜ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』。BL(ボーイズラブ)の要素も含まれた本作の童貞や同性愛者の心理の描き方に、ゲイであるライターの富岡すばるさんも“救われた思い”がしたという。そんな富岡さんに、本作の魅力について考察してもらった。

「ゲイはBLが嫌いなの?」

そうした問いかけを、今まで何度かウェブ上で見たことがある。ゲイである僕自身、実際に訊かれたことが何度かある。

主な読者層である女性向けに、男性同士の恋愛を描くBLという作品が、自分たちの存在を消費しているように感じるゲイ当事者もいるかもしれない。ただそれを踏まえた上でも、僕はBLが好きである。ゲイである僕に、男性同士が恋に落ちて幸せをつかむ物語をいちばん最初に見せてくれたのが、他でもないBLだったからだ。

男性と女性が出会って幸せをつかむことが当たり前とされ、女性が性的な存在として描かれる物語や、それを男性が消費している光景が溢れている中で、僕のように同性に恋をし、男性を性的に求める人間を初めて肯定してくれたのがBLだったように思う。
BLに出会った高校時代から30代の現在にいたるまで、僕は何度もそれに救われてきた。

そして現在放送中のドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(以下、通称の「チェリまほ」を使用)に対しても、同じ救いを感じている。もちろん、本作が救っているのはゲイだけではない。あらゆる人に対する優しさが詰まっているのだ。

「童貞」を否定的に描いていない

まずこのドラマのタイトルだが、これは「30歳を過ぎても女性とセックスをしたことのない男性は魔法が使えるようになる」という、インターネット上の掲示板から生まれたネタ話に由来している。男性が、自身が童貞であることを自虐的ながらも笑い話へと昇華させたインターネット・ミームだ。

そうした、30歳を過ぎても童貞のままだったために魔法を使えるようになった男性が、このドラマの主人公・安達(赤楚衛二)なのである。彼は魔法の力で他人の心が読めるようになり、やがて男性の同僚・黒沢(町田啓太)が自分に恋心を抱いていることに気づくところから、ラブストーリーが始まっていく。

ここで大事なのは、このドラマでは安達が童貞であるという事実を否定的に描いていないことである。