試験管で作られた脳から脳波が検出! この脳は「生きている」のか?

「人間らしさを司る脳」とはなにか
毛内 拡 プロフィール

ところが、喜怒哀楽などの「こころのはたらき」の中には、ニューロンのはたらきだけでは説明がつかない現象が数多く存在します。脳のニューロン以外の要素にその謎を解き明かす鍵があるのではないかと、注目されているのです。じつは、これまで重要視されていなかった「ニューロン以外の脳」が、脳の大切なはたらきを司っている可能性があるのです。

【イラスト】星状膠細胞「ニューロン以外の要素」が秘める可能性(ニューロンをサポートするグリア細胞のイメージ) illustration by gettyimages

私たちが「生きている」と実感できるわけ

「生きている」とはどういうことか――最初に投げかけたこの問いを考えるとき、私たち人間にとって欠かすことのできないことは「こころのはたらき」ではないでしょうか。心臓が動いていること、息をしていること、ニューロンが電気的な活動をおこなっていること……こうした現象は、生物学的な側面だけを考えれば、1つの「生」の定義として使えるかもしれません。

ただ、それだけでは、私たち人間が「生きている」とは言えないのではないかと、私自身は思うのです。美しい景色を目にしたときに感動する、人から投げかけられた言葉に怒りを覚える、身近な人の死に直面して悲しみに暮れる、好きな人と過ごすことで幸せを感じる......。

こうした人間の機微、こころのはたらきがあるからこそ、私たちは「生きている」と実感できるのです。

【写真】ヒトは感情を持つこころのはたらきがあるからこそ、「生きている」と実感できる photo by gettyimages

私たち人間が「生きている」とはどういうことか。これは、人間らしさとはどういうことか、 を考えることにも通じます。このことを理解するためには、「ニューロン以外の脳」のはたらきが欠かせないだろうと考えて、私は研究を進めています。とくに「知性」や「健康な脳」ということを考えるうえで、脳のニューロン以外の要素が重要な役割を果たしているのではないかということに注目しています。

たとえば、ヒトを含む動物の脳の大半は、グリア細胞と呼ばれる謎めいた細胞から構成されていますが、このグリア細胞が脳の情報処理にも関与することを示す証拠が見つかってきています。また、頭蓋骨の下では、脳脊髄液と呼ばれる液体が脳内を循環していて、この脳脊髄液が正常で健康な脳のはたらきを維持している可能性が提唱されています。

これらのことを理解して納得してもらうためには、まず脳を構成する要素について1つひとつ理解していく必要があります。本書『脳を司る「脳」』では、そのはたらきを順にご紹介しています。中には、まだそのはたらきが完全には理解されていない未知なる要素も数多くありますが、その存在を知ることで、これまでとは脳の見方が変わることでしょう。そして、「生きているとはどういうことか」という考えも、きっと変化していくはずです。

*『脳を司る「脳」』のプロローグを再編集してお届けしました。

脳を司る「脳」
最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき


脳のはたらきは、ニューロンが担っている――この常識が覆されようとしている。 脳の中には、知られざる「すきま」があり、そこを舞台に、様々な脳活動が繰り広げられていたのだ。

心のはたらき、知性、ひらめき…… ニューロンだけではわからなかった、「人間らしさ」を生み出す、知られざる脳の正体とは?

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