試験管で作られた脳から脳波が検出! この脳は「生きている」のか?

「人間らしさを司る脳」とはなにか
毛内 拡 プロフィール

脳の神経細胞の集合的な電気活動は、脳波として知られています。たとえば、リラックスしているときはアルファ波と呼ばれるゆっくりした脳波が発生し、集中しているときにはガンマ波という速い脳波が発生します(下図)。このような脳波を測ることで、脳や体がどういう状態にあるかをある程度知ることができるのです。

【図】脳波脳から記録された脳波。脳の電気活動を示す脳波を測ることで、脳や体の状態を知ることができる

現在の脳神経科学では、脳が生きているか死んでいるかの判断は、脳波を基準に考えられています。例を挙げると、法的な脳死判定の1つに「脳波活動の消失(平坦脳波)」というものがあります。これは、脳の電気的活動である脳波が観測されなければ、その脳は死んでいると判断する基準の1つになるということです。

このように、現在では脳の電気的な活動が「生きているか」「死んでいるか」を判断する基準になっています。

【写真】脳波電気的な活動が生死の判断基準になっている photo by gettyimages

先ほど紹介した蘇生されたブタの脳からは、一部の脳細胞の電気的な活動は見られたものの、集合的な電気活動である「脳波」は観測されませんでした。ですが、さらに技術が進歩して、死後脳の機能を蘇生できるようになったとしたら、今後さらに死というものに対する考え方を根本的に変える必要があるでしょう。

「試験管で作られた脳」から脳波が記録された!

さらにもう1つ、脳の生死の概念を覆すような驚くべき研究があります。アメリカの研究グループが、試験管の中で人工的な脳を作り、その脳から「発達中の胎児に似た脳波」を記録したというのです。2018年に報じられたこのニュースは、世界中を震撼させました。

人工的に作られた臓器はオルガノイドと呼ばれますが、脳オルガノイド、いわゆるミニブレインを作製する試みは、以前からありました。しかし脳波は、脳の高度なはたらきに由来するもだと理解されてきたので、試験管内で培養されたミニブレインから脳波を記録できたことは、研究者たちをも驚かせたのです。

Photo by metamorworks/ iStock

組織的な脳活動が観測されたということは、単なる細胞の寄せ集めではなく、「はたらき」を持った脳組織を作り出すことができたということを意味しています。かつてサイエンス・フィクションの遠い世界のお話だったことが、今まさに現実になりつつあるのです。

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