自分を責めて酒浸りになった

――残念ながら銀行員時代はそのことに気付けなかった。そして自分を責めて頑張り過ぎた結果、入社2年で退職することになってしまったんですよね。

はい、最後はお酒が手放せなくなって、朝まで飲み続けて這うように仕事に行って……という状態になって。これはヤバイな、死ぬな、ということで退職しました。そこはもう、ひたすら敗北感でしたね。「頑張り続けて」というのも僕の主観でしかなくて、傍からみたら本当にダメな新入社員だったと思います。

――でもその後、出資金を集めて自分で起業されたんですよね。一時は10人の従業員を抱えるまでに拡大し、上手くいっていたそうですが……。

ええ、ですが最終的には事業破綻して2000万円の借金を抱え、飛び降りるためのビルを探す、という日々に陥りました……。ただ、起業して社長になったことで、雇う側の気持ちが分かったんですよね。これは大きかった。いかに自分がダメな新入社員だったかということがしっかり理解できましたから。

自分が上司の立場になると、「頼むから空気読んでうまいことやってくれ…」って思っちゃうこと、あるんですよ。自分ができなかったくせに。ひどいめにあった職場の上司を恨む気持ちは今でもあるんですけど、同時に同じくらい「申し訳なかった」と思います。自分が上司でも「上手く」はやれなかっただろうと。

――なるほど。これまで借金玉さんを叱っていた人たちの立場に立てた、ということですね。そこから、いろいろなことが上手くやれない人には、どう接するのが良いと感じましたか? 

発達障害を持つ人って、何かを「やれ」とざっくり言われても、それは対処が難しいんです。おそらく皆さんが部下に「これ、もう少し見やすいように直して」などと命じたときも、ちゃんと直ってるのは5回に1回、くらいのものではないでしょうか。こういったざっくりとした指示に対応できないのは発達障害者に限らないと思うので、指示を出すならできるだけ具体的に、それも責めない言い方を心がけたほうが効果的だと思います。

まずは「これをこのように何とかしてほしい。何とかならないだろうか?」と聞く。できれば、「どうしても何とかならないなら、ならない前提で進めるから」と付け加えれば、相手も委縮せず考えられると思います。

たとえばいつも締め切りを守れない部下がいたとしたら、「締め切りに遅れることでこういう問題が起きている」と問題点を具体的に伝えたうえで、「君を責めているわけではない。締め切りに遅れない、あるいは締め切りに遅れても問題にならない方法を考えてほしい」と言うのです。

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さらに改善を狙うなら、何も問題が生じていないときに「こんなときこそ君が締め切りを破らない方法を考えよう」と提案するのが良いと思います。かく言う私も今まさに原稿の締め切りをぶち破っているので、連日、プレッシャーをかける大迫力のメールが来ているのですが……、ぶち破っている最中や直後に「なぜ守れないんだ!」と詰めても、もうパニックになって何も考えられないんですよね。