ドイツは今年前半は新型コロナウイルスの感染拡大が抑止ができている国として、世界的ベストセラーとなった『銃・病原菌・鉄』でピューリッツァー賞を受賞したカリフォルニア大学ロサンゼルス校教授のジャレッド・ダイアモンド氏も評価していた。
ドイツの感染抑止が当初成功していた理由について同氏は「個人主義的側面よりも社会意識を重視している国民性」を指摘し、日本にも同様の国民性があることに言及した。個人主義、すなはち、個人の自由を重視するアメリカやオーストラリアと比べた場合、日本やドイツは社会秩序を守ることを重視しているため、お上の命令を順守する傾向が強いというのである。
お上の勧告に従って感染防止をし続けた日本とドイツ。しかし、新型コロナウイルスの収束が見られぬ中、両国の人々は社会秩序を守り続けるという忍耐力が限界に達してしまったようだ。今、両国の人々がコロナ慣れし、気持ちが緩んでしまっているために感染が再拡大している状況はそのことを証明しているように思う。
国民の緩んだ心に両国の指導者はどう対応したかというと、そこには雲泥の差があった。
メルケル首相は、拳を振りかざし、懇願するような眼差しで熱く訴えた。
「クリスマス前にたくさんの人と接触し続けることで、今年のクリスマスが祖父母と過ごす“最後のクリスマス”になるような事態は絶対に避けなくてはなりません」
ドイツの国民はそこから差し迫った危機感を感じ取ったことだろう。