「前向き」が難しいと感じる人たちに

「なぜ前向きに考えられないの?」
「もっと自分を主張したらいいのに」
「なんで自分からダメな方向に進んでしまうの?」

こんな問いかけに苦しむ人たちがいる。

特に、コロナ禍になり私たちの生活は大きく変化した。そんな中で、少しでも前向きに生きよう、嫌なことは嫌だと主張しよう、女性も声を上げていこうという動きが活発になっている。もちろん、それはとてもいいことだ。

でも、そうしたくてもできない人、生きるのが不器用な人が少し肩身が狭い世の中になっている雰囲気もある。

現在、「Kiss」のデジタル妹誌「ハツキス」に連載され、20日に最新刊の2巻が単行本化された丘邑やち代さんのマンガ『ふたりぐらし』には、生きることにとても不器用な「ゆりな」と「ふみ」というふたりの女性が登場する。

不思議な雰囲気を持つゆりなは、男性に求められると拒まず誰とでも寝てしまう。職場でも女性に嫌われ、周囲からは「だらしない女」とさげすまれ、求めてくる男性からも雑に扱われる。自分でもどうしようもないとわかっていても、今更変わることもできず、同じことの繰り返しで日々が過ぎいく。

そんなゆりなと同居しているのが、イマイチ芽が出ない漫画家の「ふみ」だ。前の職場でセクハラを受けているゆりなを助けたことから、懐かれ最終的にふたりぐらしを始めることに。親友でもなく、性格は正反対なふたりなのに、不思議な同居生活。もしかしたら、共通した「生きにくさ」がふたりを引き寄せているのかもしれない。

(C)丘邑やち代/講談社『ふたりぐらし』(第1話)

人には見せない誰もが持つ奥底の本音

原作者の丘邑やち代さんは、この作品が初長編連載。今回、女性同士のふたりぐらしを描こうと思ったのは、自分自身の失敗がきっかけだったと話す。

「当時働いていた職場からの帰り道、モノレールの中でふと思いついたのがきっかけです。その頃、仕事で失敗をしてしまって、せっかくのチャンスをいかせない自分に呆れていました。相手の期待も裏切ったなとか色々考えて落ち込んで、その上過去のやらかした事まで掘り起こしてより自分に失望したりして。ちょっと荒んでたと思います(笑)。

そんなときに『ダメな女性』、ダメダメ過ぎて何も持っていないけど、大切にしたい友達はいる女性……を描きたい、と思ったんです。責め疲れして自分を慰めようとしたんだと思いますね」(丘邑さん)

(c)丘邑やち代講談社『ふたりぐらし』(第1話)

前向きであることが善であるような空気を息苦しく感じたり、頑張ることに疲れたりしたときに、本作を読んでなにかを受け取っていただけたら、と思います

第3話では、家賃や光熱費をふみちゃんに全額負担してもらっているゆりなが、ふみちゃんにとってどのように写っているかが語られるシーンに、2人の関係性の妙があります」と語るのは、担当編集の山内さん。

うまくいかない憤り、ずっとこのまま?と感じる将来への不安、口に出すことさえ怖くなる寂しさ……。人にはなかなか明かさない「負の部分の本音」をリアルに描いた作品でもある。「ゆりな」にも「ふみ」にも共感できる人はきっと多いはずだ。